論文
Oda, H., Nishimura, O., Hirao, Y., Tarui, H., Agata, K. and Akiyama-Oda, Y.(2007)
Progressive activation of Delta-Notch signaling from around the blastopore is required to set up a functional caudal lobe in the spider Achaearanea tepidariorum
Development 134, 2195-2205.
解説
クモ胚において、“尾葉 (caudal lobe)”と呼ばれる尾の部分がどのように形成されるかを細胞/分子レベルで解析した論文。ほとんどの節足動物の体の後半部分は、胚発生において胚帯の後端部の成長領域と呼ばれる領域の成長で起こる。この様式は、胚全体を発生初期に同調的に分割させるショウジョウバエの様式とは大きく異なる。この発生様式の違いは節足動物の体作りの進化を考える上で極めて重要であるにも関わらず、成長領域を細胞/分子レベルで解析できる実験系が存在しなかった。本論文で私たちは、オオヒメグモ(鋏角類)が成長領域の発生を解析するための優れたモデル系となることを示すとともに、RNAiを用いてDelta-Notchシグナルが尾葉(クモの成長領域)の特異化に必要であることを示した。得られたデータは、Delta-Notchのシグナルが原口付近からダイナミックに放射状に活性化領域を広げ、中胚葉と尾葉外胚葉の間の運命を二者択一的に決定していることを示唆した。この研究は、脊椎動物を含め多くの動物で“尾”と呼ばれている領域の発生がどのように進化してきたかを理解するための糸口となるものである。
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