論文

Su, Z.-H., Sasaki, A., Minami, H., Ozaki, K. (2024)

Arthropod phylotranscriptomics with a special focus on the basal phylogeny of the Myriapoda.

Genome Biology and Evolution, evae189.

解説

ゲノム規模の遺伝子配列データによる節足動物の系統関係の解明

節足動物は、クモや、ムカデ、エビ、カニ、昆虫類を含む地球上最も多様化した動物門である。その一方、短期間に多くの系統が分岐しているため、系統関係の解明は依然として困難を極めている。本研究は、ゲノム規模の遺伝子配列データを用いた、10個のデータセット(スーパーマトリックス)を構築して、節足動物の主要な分類群の系統関係の解明を行った。その結果、節足動物では、鋏角亜門Chelicerata、大顎類Mandibulata、多足亜門Myriapoda、汎甲殻類Pancrustacea、六脚亜門Hexapodaがそれぞれ単系統であり、汎甲殻類ではムカデエビRemipediaが六脚類に最も近い系統であることがすべての解析において確認された。六脚亜門では,近年の分子系統解析の研究から準新翅類Paraneoptera(カメムシ目Hemiptera、アザミウマ目Thysanoptera、カジリムシ目Psocodea)が側系統であり、カジリムシ目が完全変態類に近縁であることが示唆されているが、本研究の一部の解析結果から準新翅類の単系統性が支持された。そのため、カジリムシ目の系統的位置についてはさらなる解析が必要であることが判明した。本研究で最も強調したいのは多足亜門の4綱の系統関係である。これまでにほぼあらゆる系統仮説が提唱されてきたが、本研究はすべての解析において、コムカデ綱Symphylaとエダヒゲムシ綱Pauropoda、ムカデ綱Chilopodaとヤスデ綱Diplopodaがそれぞれ姉妹群であることを強く支持し、結論に迫った。今回の結果は、節足動物の進化を理解する上で重要な知見を与えるものである。

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