論文
Su Z.-H., Sasaki, A. Kusumi, J. Chou P.-A., Tzeng H.-Y., Li H.-Q., and Yu H. (2022)
Pollinator sharing, copollination, and speciation by host shifting among six closely related dioecious fig species
Commun. Biol. 5, Article number 284
解説
イチジク属植物(以下イチジク)とイチジクコバチ(以下コバチ)は、植物と昆虫が繁殖を相互に依存する絶対送粉共生系であり、両者が同調的に進化する「共進 化と共種分化」の典型的な例として古くから研究されてきました。しかし、 近年の研究からコバチとそのホストであるイチジクの種分岐が一致しない例が発見 され、コバチが宿主を変更するホストシフトによる種分化の可能性が示され ました。本研究は、コバチの種分化のメカニズムを明らかにするために、ホストシ フトが生じる可能性の高い島嶼地域に注目して、中国南部から台湾・琉球諸島にか けて分布する近縁のイチジク6種とそのコバチを研究対象として、それらの系統関 係と島嶼間の集団遺伝構造を様々な分子マーカーを用いて解析しました。そ の結果、1)中国南部の5種のイチジクの送粉者が 1 種のコバチであること、2) 大陸と島嶼でイチジクとコバチの移動によるホストシフトが生じた結果、同所的と異所的共送粉が起きたこと、3)大陸のイチジクが台湾・琉球諸島に移入後、現地 のコバチがホストシフトすることで新しい送粉者となり「1 種対 1 種」関係を再構 築した結果、コバチの種分化が生じていたこと、が判明しました。これらの研究結 果に基づいて、「1 種対 1 種」関係の再構築を原動力とする種分化モデルを提唱しました。
本研究の成果のまとめ。左:5 種のイチジクが1種のコバチを共有。右:大陸から台湾・琉球諸島に移入してきたイチジクは、現地で新しいパートナーのコバチ と「1種対1種」関係を構築し、コバチの種分化をもたらす
本研究の結果から提唱した「1 種対 1 種」の再構築を原動力とする送粉者の種分化モデル
プレスリリースを行ないました。論文についての詳しい説明はこちらをご覧ください。
プレスリリースはコチラ
イチジクとイチジクコバチの共生の仕組みについてもっと詳しく知りたい方はコチラ
共著者でもある国立中興大学(台湾)の方たちと一緒に、台湾で行ったサンプル採集の様子をまとめた動画です。