論文
Imura, Y., Tominaga, O., Kashiwai, N., Okamoto, M., Osawa, S. and Su Z.-H. (2018)
Evolutionary history of carabid ground beetles with special reference to morphological variations of the hind-wings.
Proc. Jpn. Acad., Ser. B 94: 360-371.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/94/9/94_PJA9409B-01/_html/-char/en
解説
昆虫は海から陸に進出し、その後の進化過程で翅を獲得し有翅昆虫が誕生しました。翅獲得という進化イベントは昆虫の多様化に大きく貢献したと考えられています。しかし、現生の昆虫類には甲虫類を始め、逆に翅をなくしているものも少なくありません。翅の退化もまた昆虫の多様化に寄与しています。 オサムシ(亜科)は後翅を退化して飛べなくなった代表的な昆虫類の1つです。しかし、オサムシはなぜ、どのようにして後翅をなくしたのでしょうか。それを理解するために、我々はまずオサムシの後翅退化の実態を把握する必要があると考え、研究をはじめました。その結果、もっとも祖先的な系統であるセダカオサムシ族は後翅が完全に消失していること、オーストラリアオサムシ族とオサムシ亜族は後翅が退化しているが、様々な形の痕跡が残っていることを判明しました。 また、唯一完全な後翅を持って飛べるカタビロオサムシ亜族にも、後翅を退化した種が多くいることが分かりました。また、これらのオサムシの系統関係を解析し、後翅の退化状態との関連について議論しました。本研究の結果から、オサムシの後翅退化は、恐らくそれぞれの系統で生息環境の影響を受けて独立的に起きただろうと考えました。今後はオサムシの後翅退化の分子機構についても調べてみたいと考えています。