昆虫-植物の関連性データベース InsectInDB
どの生物も単独の種だけで存続することはできません。他の生物との関わり合いの中で生きています。例えば、植食性昆虫と植物の間には、食べられないように防御する仕組みを発達させる、それを克服することによって餌として利用できるようになる、といった競争的関係などが見られます。特にアゲハチョウの仲間は、寄主(幼虫の餌として利用する植物)を変更したことをきっかけに種分化(生物学的な意味での進化)が起きたと考えられています。生物間の関わりを理解する研究を手助けするため、日本にいる蝶とその食草について、食性の関係性を検索できるデータベースを作成しました。InsectInDB (いんせくと・いん・でぃーびー)と名付けたこのデータベースを用いて、これまでとは異なる関係性が見えてきました。
かつては、植物が防御機構を変化させると、それを追いかけるかのようにチョウたちが適応していった共進化であると考えられていましたが、InsectInDBを用いた我々の研究によって、植物の進化の歴史を背景とする系統的類似性よりも、植物に含有する化合物の類似性の方がチョウたちとっては重要であること、そして食草を分類群が大きく異なる植物に変更する際には、その昆虫にとっては毒性が低い植物を一時的に安全地帯のように利用するというステップを挟んでいる可能性があることを明らかにしました。つまり、共進化ではなかったのです。
解説
今後は生息地や発生時期などの情報を追加して、機械学習を用いて「生きている」を詳細に再現できることを目指して研究を進めています。
InsectInDB は一般公開していますので、どなたも自由にご利用いただけます。莫大なデータ量ですので、開発した我々が気づいていない事もたくさん残っていると思います。ぜひあなたが新しい知見の発見者になって、研究者たちが最もワクワクする「見つけた!」「気がついた!」という瞬間の喜びと、研究という活動の過程を味わってください。
データ登録数: 2020/07/15現在
- 昆虫: 約1,780種
- 植物: 約2,660種
- 関係: 約7,640
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毒性化学物質: 約350
道端で見かけた植物には、どんな昆虫が来るのか調べられます。
昆虫と植物という異なる生き物たちが、どの様に関わり合うのか視覚的に見ることができます。
InsectInDB ワークブック
身近にいる生き物を使って InsectInDB を検索して、昆虫と植物のネットワーク関係を解析しよう!
昆虫-植物関連性データベースで解析研究に挑戦
InsectInDB を使うとどんな事が解るのか、実践形式で解説します。
関連するデータベース
- GBIF: Global Biodiversity Information Facility (地球規模生物多様性情報機構)
- JBIF: GBIF日本ノード
- S-net: サイエンスミュージアムネット
Q&A
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InsectInDB に関連して文献等で引用される場合、ダウンロードしたデータやスクリーンショットを使用される場合は、当サイト(https://www.brh.co.jp/research/lab01/InsectInDB/)へのリンクを掲載すると同時に下記の論文を引用してください。Ai Muto-Fujita, Kazuhiro Takemoto, Shigehiko Kanaya, Takeru Nakazato, Toshiaki Tokimatsu, Natsushi Matsumoto, Mayo Kono, Yuko Chubachi, Katsuhisa Ozaki* & Masaaki Kotera* (2017)
Data integration aids understanding of butterfly–host plant networks
Scientific RepoRts | 7:43368 | DOI: 10.1038/srep43368
http://www.nature.com/articles/srep43368.epdf