from BRH

植物の進化の道のりを見渡す

サイエンス・コミュニケーター&プロダクションセクター

「ものみなひとつの卵から」展
「顕微鏡でみる38億年の進化」展
顕微鏡観察を中心に藻類から陸上植物までの進化を辿る。
2008年5月17日〜8月30日まで開催。現在はミニコーナーにて展示中。
 「植物」と聞くと地上に根をはり、茎と葉を持ち、花が咲く姿を想像します。しかし、生物は本来海で生まれたもの、植物も例外ではありません。海中の単細胞生物の中に光合成をする仲間が生まれ、それが大きな細胞に共生したところから、後に植物につながる「藻類」が誕生しました。
 さて、その中で上陸したのはどれだろう。DNAを比較したところ、植物の系統では、多細胞化が何度も起こり、そのうちの一部が陸上植物の祖先となった可能性が見えてきました。ラン藻や藻類の中にも、上陸に成功した仲間がいますが、複雑な形態を持ち、ついには花を咲かせた植物に比べてかなり地味です。植物の進化と上陸をゲノム・遺伝子から知る努力をしています。

多様な植物に見る遺伝子のやりくり

佐々木剛
 生物の多様な遺伝子のほとんどは、既存の遺伝子が変化したものです。例えば重複によりできた二つの遺伝子のうち一方が新しい機能をもったり、遺伝子間のドメイン交換によって、機能の異なる遺伝子が生まれることもあります。これを祖先遺伝子として、さらに重複とドメイン交換をくり返して生まれた遺伝子族は、機能や構造の異なるサブファミリーにわけることができます。多細胞動物に特有な受容体型チロシンキナーゼ遺伝子族のサブファミリーの多くは、5.4億年前のカンブリア爆発よりはるか昔の単細胞生物の時代に誕生していたことがわかっています。
 藻類に比べ形態が複雑な陸上植物には、特有な遺伝子族が多く存在します。受容体型キナーゼ遺伝子族もその例で、シロイヌナズナでは600種類以上もの遺伝子が見つかっています。被子植物でしか見つかっていなかったこの遺伝子を調べた結果、陸上植物の中でも古くに分岐したコケから29種類、単細胞藻類のミカヅキモからも14種類見つかりました。受容体型キナーゼ遺伝子族が藻類にも存在することから、多くのサブファミリーが生まれた時期は、藻類と陸上植物が分岐する以前に遡れます。さらにどこまで遡ることができるのでしょうか。また、体細胞からの胚発生に関わる遺伝子は単細胞藻類では何をしているのでしょうか。藻類から陸上植物への進化を読み解く手がかりを藻類に求め研究中です。

佐々木剛(京都大学大学院理学研究科)
2004年よりBRHにて「生物の多様化と遺伝子の多様化との関係」について研究。08年より京都大学で宮田隆研究顧問とともに研究を続行。目下“生きもの上陸作戦”がテーマ。
※BRHカード58号より掲載