目の美しい生き物に魅了される。たとえば、夜の猫たちのその目。夜が更けるほど澄んで輝きを増していく猫の目は、長い夜の孤独をも忘れさせてくれる。まるで自分に向けられている情熱の証のように感じられるのだ。

逆にその黒々とした目に宿った怯えを、私に焼きつけたのは、アカネズミという野ネズミの目だった。私が大学時代、森や研究室でともに時間を過ごした生き物だ。

アカネズミの目は大きく、顔の3分の1はあろうかと思われる。夜行性なので、夜になると真っ黒く艶やかに輝くのは猫と同じだが、私は研究という名のもとに、何度も彼らの生命を脅かさざるを得なかった。そんなたびに、私はその黒々とした目に宿った怯えを見た。そして私は、その怯えにむくいるような研究を何一つ残すことができなかった。本当にひどいことをしたと思っている。

それから何年も経って、私はある眼鏡をかけた男の人に出会った。その人は乱視がひどく、極度に厚いレンズの眼鏡をかけていた。聞くと、お嬢さんにもその乱視があるという。

「娘の眼鏡をはじめて買ったときに、まだ小さいと思っていた彼女が、こんな眼鏡をしなきゃいけないなんていやだとぐずったんです。私がうるさい、と睨みつけようとすると、その眼鏡のレンズの中で、彼女の目がものすごく大きく見開いた。ああ、私が怒ると娘はこんなに怯えるのだということにはじめて気づきましてね。以来私は怒ることができない」

彼のその話を聞いたときにも、私が思い出したのは、またアカネズミの目だった。

お嬢さんの目も、彼らの目も、きっとあまりに美しく澄んでいたからこそ印象的だったのだろう。私の小説にも、時々そんな目が登場する。

(たにむら・しほ/作家)