季刊誌「生命誌」通 巻25号 
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Gallery Special
[企画展示]生命の樹 -科学と芸術の実験場-
布に描かれた世界の生命の樹
: : 布に描かれた世界の生命の樹 : :
生命の樹は、世界中に認められる樹木崇拝と、人々の生命、世界、宇宙に対する畏敬の念とが結びついて誕生したものと考えられる。それらの多くは、タペストリーや絨毯などの布に描かれた。
布に描かれた世界の生命の樹
ペルシャ更紗
【ペルシャ更紗】
(264K)
(儀礼用装飾布?19世紀末)

左右対称の非常にきちんとした生命樹。秩序正しく積み上げられた山の頂上に花が咲き、そこからさらに、まっすぐなペイズリーが伸びている。樹下には、虎と孔雀が配置され、鳥がとまっている。余白はストライプの中にロゼット(様々な花の正面 の形をデザイン化したもの)の花唐草が配置されている。周囲は波形で囲われ、さらにその周囲にペイズリー連続文様が描かれ、豪華である。 (協力=今昔西村)


生命を考えるのに境界はありません。
人が生きていくうえで、生物や生命はだれにとっても重要なテーマです。
生物学では、科学を通して生命を考えますが、 他の分野では、どのように生命をとらえようとしているのでしょうか。


科学と芸術。
この二つが一緒になって生命を考えた時、いったい何が見えてくるのか。
企画展示「生命の樹 ─ 科学と布の芸術にみる生命観」は、その実験場でした。
科学の論理をどう表現し、芸術から何を読み取るか?


その過程で、私たちは、昔の人たちが芸術として描いた絵の中に、 おおらかな生命の見方があることに気づきました。
生命を身近に感じる人々の暮らしがあることを知りました。
そして、それらは共通のかたちで描かれていました。


この気づきから、科学によってとらえた生命を 同じかたちで描いてみることにしました。
現代科学が明らかにした生命の仕組みを表現するのに、 そのかたち ─ 樹 ─ はとてもふさわしいものでした。


古来、人々が生命をなぞらえて描いた生命の樹。
そして、科学が描く生命の樹。
科学と芸術が生命誌研究館というフラスコの中で一つのかたちに結晶しました。
二つがつながったとき、現代に生きる私たちと生命の新たな関係が見えてくるのです。
インド更紗
【インド更紗】
(92K)
(儀礼用装飾布18世紀後半)

インドネシア・スラウェシ島トラジャ族が儀礼用に使っていたインド製の布。天地がなく、どちらからも見ることのできる生命の樹である。生命の樹は本来上に向かって立つものだが、時にはこのように、円文様を描かんばかりのものもあった。山上に生えた樹は、上に伸びることなく、腕をいっぱいに拡げたように左右に広がっている。中心は、同心円上に八つの花をもったロゼットを成し、ボーダーはぎっしりと花を描いた花唐草になっている。 (協力=みずたに)
ヨーロッパ銅板更紗

【ヨーロッパ銅板更紗】
(64K)
(儀礼用装飾布?19世紀後半)

ヨーロッパではインド更紗が大量に輸入され、その消費量 があまりにも多いため、英仏ともに幾度も輸入禁止令を出したが効果はなく、18世紀後半には、自ら更紗をデザインし作るようになる。インド更紗の模倣品はそのような過程でできあがり、銅板プリントというヨーロッパ独特の方法を編み出した。 (協力=みずたに)
 
INDEX
  布は生命そのものである:田中優子
進化を絵にする作業──生物学の描く樹:長野敬
イメージの共感 :吉本忍
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