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BRHサロン

豊橋エコミュージアム構想

松岡敬二

1994年9月から95年7月にかけて、ロシア連邦サハ共和国のヤクーツクに3回出かけた。ヤクーツクはシベリア開拓の前線基地となったところで、北緯62度に位置する。ここは夏の気温が30度以上にもなり、冬にはー50度を下回る厳酷の地である。地下の凍結した土壌が融けることのない永久凍土地帯である。ここに住む人たちは、厳しい自然の環境のなかで自然と一体となって生活している。

ヤクーツク郊外のホムスタッハ村を訪問すると、そこには小さな博物館があり、村の歴史や自然の資料が展示してあった。館長さんの丁寧で熱のこもった説明には、この地に暮らす人々の生命力の強さを感じた。住民の生活のなかに博物館がとけ込んでいるのである。これこそ、まさにエコミュージアムの原点である。

エコミュージアムは20年以上も前にフランスで生まれた概念で、「地域および環境における人間の博物館」を意味している。エコという語はギリシャ語のオイコス(=家、家庭、家族)という語から生まれたものである。官庁主導で教育的な色彩の強い従来型に比べると、住民・生命・環境に比重を移した共生型のミュージアムといえる。

豊橋市には大植物群落(国の天然記念物)で知られる石巻山や、葦毛(いもう)湿原など変化に富んだ自然がある。そして私のいる自然史博物館をはじめ、地下資源館、二川宿(ふたがわじゅく)本陣資料館など個性的な6つの博物館がある。進取の気性に富んだ35万人の住民がいる。博物館と住民、自然をネットワーク化して、ホムスタッハ村に負けない「工コミュージアム」を豊橋市に構築していくのが私の夢である。

葦毛湿原(協力=豊橋市自然史博物館)

(まつおか・けいじ/豊橋市自然史博物館学芸員)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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