ここから将来背骨ができるんですよ」。顕微鏡下のニワトリ胚を見ながら説明する青山研究員。 「なんてきれいに染まっているんだろう」。アルシアン・ブルーという色素で骨だけを染めたニワトリ胚を手にしながら。 「これが私が研究に使っている藻類たちです」。パネルを使って説明する石丸研究員(大濱研究員のグループで、藻類の実験を担当。分子系統樹が藻類の世界に迫る参照)。 熱心な参加者を前にして、岡田館長の話にもますます熱が入る。(写真=外賀嘉起)

生命誌研究館の英語名「バイオヒストリー・リサーチ・ホール」の「ホール」の意味は、「人が集まるところ」。だから「リサーチ・ホール」は「人が集まる研究の現場」ということだ。

研究者の何でもない日常空間を、いろんな人に見てほしい。ごくふつうの人間としての研究者にも会ってほしい。生命誌研究館では、そういう思いから、実験室の見学ツアーを数カ月に1度企画している。

受付に手製の開催案内を置くだけで、とくにPRはしないが、毎回多数の参加者があり、企画した側としては、とてもうれしい。

開館以来4回目に当たる今年の5月27日のツアーにも、小学生から、主婦、会社員、大学の講師まで、さまざまな分野の約40人が参加した。

生命誌研究館の実験研究を行なうラボラトリー部門には、グループリーダーのもとに4つの研究グループがある。

●チョウの翅の形と模様の形成(吉田昭広研究員)。

●両生類の胚における眼(とくにレンズ)の発生(高橋直研究員)。

●甲虫の仲間のオサムシや、ミドリムシなどの藻類のDNA解析による系統分類(大濱武研究員、ただしオサムシの研究は、大澤省三顧問がリーダーシップをとっている)。

●ニワトリ胚における骨格の形づくり(青山裕彦研究員)。

1階コンファレンス・ルームでの簡単な研究紹介の後、参加者たちは小グループに分かれ、コミュニケーション部門のスタッフの案内のもとに、3階の実験室とDNAの配列決定装置などのある共同機器室を順に見て回った。

実験室では、プログラムされた細胞死により死んでいくチョウの翅の細胞を、顕微鏡で見て感激する人、卵の中でニワトリ胚の心臓が動いているのを見て驚き、感慨にふける人など。一見はしゃぎながらも、参加者の目は真剣そのものだった。

案内するうちに、「最近、新聞で読んだのですが、遺伝子を調べると、すべての男性の祖先は二十数万年前のアフリカ人にさかのぼるって本当ですか?」と質問が飛び出し、こちらはびっくり。たまたま、私たちの間でも話題にしていたので答えることができたが、改めて、参加した人たちの生物学に対する関心の強さに驚かされた。

最後に、3階実験部門の談話スペースに全員が集合。岡田節人館長が、「科学の実験室いうたら、どんなに大きな機械が並んでいるかと思われるかもしれないが、現代の生物学では、そんなにたいそうな道具はほとんどあらへん。一見何の変哲もないところで、最先端の科学が生まれるんや、ということを実感してくれるとうれしい」と、トレードマークの岡田節で熱弁をふるう。その後、研究員・案内の私たちも交えて、まだまだ尽きない議論を楽しんだ。(今年度後半の予定は、11月11日と来年1月13日です。興味のある方は、ぜひご参加を。)

(コミュニケーションスタッフ・加藤和人)