季刊誌「生命誌」通 巻3号
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絹を吐く昆虫たち
顕微鏡で見る絹の再生現場:長島孝行
 絹を吐くのはカイコだけではない。おそらく、ほとんどの昆虫が、なんらかの形で絹を作る能力を持っているとみられる。
 絹は時に幼虫を寒さから守る布団になり、雌へのプレゼントを包む包装紙になる。
 絹は人間以上に、生物たちの大切な資源になっているのである。
顕微鏡で見る絹の再生現場
 シルクを生成する細胞(絹糸腺細胞)には特徴がある。たとえば、カイコやサクサン、タサールサンなどの腺細胞は孵化後細胞分裂せずに肥大成長するので巨大な細胞となる。核も樹状に分岐し、DNA量は通常の細胞の数十万倍にも達する。また、シロアリモドキでは多核細胞になる。いずれにしてもこれらの現象は絹タンパクを作るためには必須のようだ。
 これらを電子顕微鏡で見ると、細胞質のいたるところにタンパク合成の担い手である粗面小胞体、ゴルジ体などが多数見られ、腺腔には大量のフィブロインを放出している像が見られる。しかし、もっとも太い糸を吐くタサールサンはカイコと違って内膜が二次的に欠如しており、そのために老化したミトコンドリアが腺腔に入って、独特の物性、光沢を持った糸になるらしい。金色の糸を作るムガサンも似ている。シロアリモドキでは、フィブロインとセリシンの2種類のタンパクを一つの細胞が作るという特異な現象が観察されている。

培養したカイコの絹糸腺と出てきた絹。 カイコの絹糸腺の断面。核は樹状に分岐し、右下の内腔には分泌したフィブロインがたまっている。
タサールサンの絹糸腺の電子顕微鏡写真。細胞質と内腔の間に内膜が欠如しているため、内腔にはフィブロインのほかに多数の空胞が入り込んでいる。 シロアリモドキの脚の中にある多数の球状の絹糸腺細胞。それぞれの細胞は多核で内側に液状絹がたまっている。
(ながしま・たかゆき/東京農業大学農学部昆虫学研究室助手)
INDEX
  絹を吐く昆虫たち:長島孝行
絹づくり昆虫百態百様
絹づくり遺伝子に見る進化:鈴木義昭
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