生命誌研究館で進めてきた常設展示「オサムシで進化を読む」が完成した。身近にいる昆虫を使って進化の不思議を体験できるユニークな企画を楽しんでください。


「進化の部屋」は、1階ホールの右サイドに位置している。ガラス張りの壁面に書かれた "THE HALL OF EVOLUTION" の英文文字が酒落た雰囲気を醸し出す。

本誌の前号(10 May l993)で紹介した、東京都立大学の石川良輔教授の研究「オサムシにおける錠と鍵の関係」を立体パネル化したもので、八つのパネルと四つの展示台からなっている。

中央の展示台は、実物の標本によって、交尾片を持つオオオサムシ亜属が日本列島でどのように進化・拡散していったかを示したもの。ボタンを押すと、グラスファイバーの光が、三つの種群(オオオサムシ種群・ヤコンオサムシ種群・アオオサムシ種群)の進化の様子を見せてくれる。

手前の展示台には、ドウキョウオサムシとヤコンオサムシの交尾片を比較展示。雄のペニスの内袋(ないたい)が変化した交尾片が、種の区分けの重要な指標になっていることがひと目でわかる仕組みだ。

左手の展示台には、世界のオサムシが世界地図の上にカラー写真で並び、ヨーロッパ産の美しい種、クリソカラブスとクリソトリバックスの標本が飾られている。

-般に進化のモデルとしては、ダーウィンが自然淘汰による進化を考えるきっかけとなったガラパゴス諸島の小鳥フィンチが知られている。この小鳥は、クチバシの形によって、大きな堅い実に適したものから、青虫などの柔らかな昆虫に適したものまで、13種類に分かれる。このくちばしの形態が、適応・拡散の結果だとダーウィンは考えたのだ。

しかし、フィンチを含め従来の進化展示には、どのタイプからどのタイプへ変わってきたのかという進化の流れが不明確なきらいがある。オサムシによる私たちの展示は、進化の方向性がはっきり見えるところに、これまでとは違う特徴が出せたと思っている。

「オサムシは、近くの公園などで見ることのできるごく身近な昆虫です。ダーウィンのガラパゴス諸島まで行かなくても、日常の身の回りで現実の進化を見ることができるということを知ってほしい」と、石川教授は語っている。

監修は石川教授。制作には、復元された沖縄・首里城(しゅりじょう)の展示室を担当した方圓館(ほうえんかん)があたった。パネルのデザインは、グラフィック・デザイン会社アーリー・バード。アメリカのスミソニアン協会の自然人類歴史博物館で、サイエンティフィック・イラストレーションを担当してきた木村政司氏によるオサムシの精密なイラストも、話題の一つ。