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 季刊誌「生命誌」通 巻1号
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生き物さまざまな表現
生命の見事なしくみ:松原謙一(大阪大学教授・分子生物学)
生命の見事なしくみ
松原謙一
(撮影=山口進)
 ガラパゴスにゆく。ジャングルに分け入る。あるいは海底に。さらに一滴の水、一塊の土壌に拡大鏡で入り込む…。その報告は常に驚きに満ちている。実におびただしいいろいろな生き物がいるものだ。こんな所にまで、と思う環境にもちゃんとそれに応じた生物が棲んでいる。それも、こんなバリエーションもあり得ますよと誇示するように多彩 だ。
 もう一つの非日常体験に分け入って遭遇する驚きも強烈だ。たくさんの生き物たちの驚くべき関係。からだを活かす見事なしくみ。さらに細胞へ遺伝子へと下降するほどに感嘆させられる見事な構造。精妙な働きと調節。しかも、それらが例外なく、生き物としての基本型や共通 の働きをちゃんと守っているとことが不思議である。みんな、進化の過程で分かれはしたが、大もとは共通 の、ご先祖さまを持つ兄弟らしい。生命が誕生してから35億年余。綿々と続きながらも、幾度となく地球環境の大変化にさらされ、大絶滅、大進化をくり返してきた生命の流れが思い浮かぶ。
 ゲノム、つまり細胞の中に担われている遺伝子DNAの総体を解析する研究が進みつつある。例えば、ヒトは全部でいくつの遺伝子からできており、それらはどういうものでどういう調節が指令されているのか明らかにしようというのである。 遺伝子DNAは巨大高分子だから、これはなかなか大変な作業である。しかし、ゲノムは「個」の命を司る指令書であると同時に、その命がこれまで続いてきた進化の記録でもある。死んだ遺伝子。行きあたりばったりとしか思えないつぎ足しやつくり替えの跡。我々の先祖を苦しめたにちがいないたくさんのウィルス感染の痕跡。時間の関わった驚きがリアルに現れつつある。生命誌は面 白くなってきた。
INDEX
  生き物のしなやかさ:岡田節人
生物フリークのひとりごと:大岡玲(作家)
生命科学の世紀へ:佐藤勝彦(東京大学教授・宇宙論)
Lecture

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