名古屋南高校生物・化学部との共同研究の成果が論文になりました!

ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ(細胞・発生・進化研究室)は10年近くにわたり名古屋南高校生物・化学部(顧問: 臼井俊哉さん)と交流を続け、お互いにクモ胚を用いた実験研究を行ってきました。クモ研究の世界では、1952年にスウェーデン、ウプサラ大のオーケ・ホルムが発表した、クムルスと呼ばれる領域の移植によって重複胚形成を誘導する実験が有名なのですが、ホルム以来長い年月の中で誰もこの実験を再現してきませんでした。そこで名古屋南高校の生物・化学部の皆さんはホルムの実験の追試に取り組み、多くの試行錯誤の結果、ホルムが用いたクサグモではなく、ハエトリグモでホルムの実験の再現に成功しました。私たちの研究室はオオヒメグモでの胚操作の実験の難しさを感じていたので、顧問の臼井さんから最初に報告を受けたときには本当にびっくりしました。そのあと、私たちの研究室でも同じハエトリグモを使って追試実験を行い、その再現性を確認しました。クムルスの移植後に重複胚が形成される様子をビデオに収めることに成功したこともあり(動画)、1952年のホルムの論文の学術的重要性を世界に広く伝える必要性を強く感じ、今回の総説論文の執筆に至りました。節足動物に対する理解はショウジョウバエからの知識に強く影響を受けていますが、生命誌研究館と高校のクラブ活動が協働して得た今回の研究成果が少しでも世界の学術研究の情勢を変える力になれば非常にうれしいです。今回の総説論文の内容に関する詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹

10年程前に生命誌研究館のオープンラボに参加し、オオヒメグモの飼育方法や胚発生の観察方法を教えていただきました。その後、平成22年度から科学技術振興機構による「中高生の科学部活動振興プログラム」に参加し3年間の支援を受けるにあたり、生命誌研究館の小田先生に研究指導をお願いし、オオヒメグモの飼育・胚発生過程の研究を始めました。このプログラムを通じて、毎年学校の夏季休業中に小田先生に講義していただき、その中でクモ研究の歴史や実験生物としてのクモの有用性等を知ることができました。そして、プログラムの3年目となった平成24年10月に、アダンソンハエトリグモ卵を用いた初の重複胚の作出を確認することができました。顕微鏡下の重複胚を見て参加生徒と感激するとともに、胚発生に関わるシグナル分子の存在が現実のものとして感じられました。

小田先生はじめ生命誌研究館の皆様の親身なご支援に助けられながら、「プロ・研究者がやらないこと・やれないこと、利害が絡まない高校生だからできることをやるのが、高校生として研究することの意義の一つだ」という小田先生のアドバイスに支えられながら、その後もハエトリグモを中心に研究を続けてきました。

私たちの研究活動が、この度の総説論文に少しでも貢献できたのであればこんなにうれしいことはありません。また、クモ卵を用いた胚発生の研究に参加した歴代の生徒たちが、高校入学前までの単なる理科好きな生徒から、将来の科学研究を志向する高校生に成長していったと実感しています。

臼井俊哉

小田研究室で習ったクムルス移植実験

アダンソンハエトリグモの卵嚢

重複胚の作成に成功

愛知県高等学校文化連盟発表会

日本進化学会高校生ポスター発表

参加した学生さんの声

  • このような貴重な体験を高校生という身でできたことを嬉しく、また、ありがたく思います。研究・実験の方法を一から学ぶことができたので、今後自身が研究する際に生かしたいと思います。
    <2018年度卒業生 女子>
  • ホルムの実験の追試を行うことによって、研究のやりがいや楽しさを学び、私の進路に大きく影響を受けました。とても貴重な経験ができ良かったと思っています。大学での研究でも、この経験を生かせるように頑張りたいです。
    <2018年度卒業生 男子>
  • 名古屋南高校のクモの研究は約10年になります。これまでの先輩方がやってこられた研究を今後も受け継いでいきたいです。私は現在クモの研究に携わって2年になります。クモを用いての研究は、クモが卵を産んでくれなかったり、卵の発生が思ったように進まなかったりと大変なことも多いのですが、楽しく研究を続けています。
    <2018年度在校生 女子>