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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【わかるってどういうことだろうか。】

2018年5月15日

川名 沙羅

昨年、展示ホール1階の「細胞展」に細胞が自らのはらたらきを語る映像作品をつくりました。1ミリの100分の1ほどの小さな細胞の中にある、動的な世界を美しく表現したいと完成させた作品です。顕微鏡でとらえた研究動画像も投影しており、小さな分子のふるまいや、細胞内がダイナミックに変化する様子に来館者の方が「おおお、すごい!」と歓声をあげてくださると、私まで誇らしい気持ちです。


撮影・大西成明

今年は、壁面パネルなどの刷新を進めています。多様な細胞が関わり合いながらはたらく細胞社会、私たちのからだの物語です。先日、制作会社さんへ打ち合わせに行ってきました。現在のパネルのメッセージをいかしながら、よりよいものをつくりたいと自分なりに整理してもっていったところ「よくわからないし難しい」とコメントを浴び、「むっ」としました。侃侃諤諤と議論すること2時間強。次に何をすべきか方向性はなんとか決まりました。冷静になると最初に私が話していたことは、たしかにわかりづらかったかなと思えてきました。自分の「わかる」がほかの人の「わかる」と一緒ではないのは当たり前のことですが、ついつい自分の頭の中だけで考えて自己満足してしまいます。さまざまな視点を重ねながら深く考えるには、他の人の言葉をきちんと聞かなければいけないと思いつつ、「私は正しいはず」という思い込みと戦う日々です。

まだまだ展示づくりには険しい道のりが残っていますが夏の完成を目指しています。細胞を通して「生きているってどういうことだろう?」と多くの人と考える場となるよう頑張ります。

[ 川名 沙羅 ]

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