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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【食草園の春】

2017年4月3日

星野 敬子

今年、食草園ではジャコウアゲハとキアゲハのさなぎが冬を越しています。ジャコウアゲハは食草園ができて以来の大盛況で、見つけたさなぎだけでも20個体はありました。キアゲハのさなぎはひとつだけ。食草園に行くたびに、無事であることを確認していました。ところが3月のある日、キアゲハのさなぎが忽然と姿を消しました。抜け殻も何の跡形もなく。鳥に食べられたのか、何があったのかはわかりません。卵が幼虫になり、脱皮を繰り返してさなぎになり、成虫になるまでには、食べられたり、寄生されたり、環境が変わったりと大きな波乱があります。成虫になれるのはたった1パーセントほどだと聞きました。私たちが目にしているのは、厳しい環境を生き抜いたチョウなのですね。

たくさんのジャコウアゲハのさなぎは今も春を待っています。でもつい先日たったひとつだけ、ミカンの葉でさなぎの抜け殻を見つけました。羽化にはずいぶん早く感じますが、とてもきれいに殻を脱いでいたので、高槻の空に飛んで行ったのでしょう。4階にある食草園は日当たりよく気温が高いせいか、春が早いようです。アサギマダラを呼ぶフジバカマの根元では、新芽がいっせいに芽吹いています。

つい先日、食草園の正面に生きものの記録シートを設置しました。食草園でチョウを見かけたら、ぜひシートにご記入ください。どこにどんなチョウ(幼虫・蛹・成虫)がいたか、どんな様子だったかお知らせください。みなさんのお力も借りながら、食草園を育てていきたいと思っています。


ある日姿を消したキアゲハの蛹

[ 星野 敬子 ]

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