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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【マンダラ絵巻】

2016年11月1日

平川 美夏

BRHカードの紙工作、今年は昨年末に完成した『「生きている」を見つめ、「生きる」を考えるゲノム展』の卓上版を作りました。展示ではコの字型のゲノム展ですが、紙工作では毎回4分の1の円の台紙に展示のパーツを組み立て、4回合わせると丸いゲノム展ができあがるしくみです。構成要素は展示と同じですが、パーツを開け閉めしたり、引き出したりと紙工作らしいしかけで、単なるミニュチュアではありません。見比べるともっと楽しいと思いますので、紙工作を作って、展示も見にいらしてください。

ゲノム展の台紙の裏側、組み立てると床に接する面ですが、生命誌マンダラが描いてあります。裏側に何もないのも淋しいし、完成するとマルという、わりと単純な発想で生命誌マンダラをとなったように思います。4分の1円ずつ4回でこちらも丸いマンダラができあがります。生命誌マンダラの紙工作は、79・80合併号の立版古で作りましたが、小さくて個々の生きものや細胞がよく見えなかったのが心残りでした。今回は細部までしっかりご覧いただけますので、一つ内側の階層をアレンジした背景なども合わせてご鑑賞ください。

さて、台紙のデザインをするときに、4分の1になったマンダラを見ていて、あれ、と思いました。扇形、生命誌絵巻に見えたのです。生命誌絵巻も中心角が90度の4分の1円の扇形なので、実は同じ形をしていたのです。ああ、絵巻なんだ、と改めて見ると、ゲノムの時計が見えてきました。生命誌絵巻は、半径どこをとっても38億年の同じ時間ですが、マンダラは個々の生きものの異なる時間をそれぞれのゲノムを半径に描いたことが、両者を改めて比べることで鮮明に見えたのです。1回目は原核生物と植物、2回目は植物を遡って菌類へ、3回目は無脊椎動物から水中の脊椎動物、4回目は陸上脊椎動物と、同じグループ単位だと、それぞれの形づくりの時間や寿命まで、読み解けそうに思いました。そして再び丸いマンダラの全体を見ると、さまざまな生きものの個の時間が絡み合い、中心のゲノムから流れ出てくるようで圧倒されます。これぞ生命誌のマンダラと思いを新たにしました。

卓上ゲノム展最終回の91号は発生のエピゲノムです。あなたのゲノムから38億年の時を経て、個の時間にたどり着きました。こちらもお楽しみに。

生命誌絵巻を見る
http://www.brh.co.jp/imgs/about/emaki/emaki.jpg

生命誌マンダラを見る
http://www.brh.co.jp/imgs/about/emaki/mandarah.jpg

[ 平川 美夏 ]

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