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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【「生きる」を考える場】

2016年10月17日

村田 英克

生命誌のドキュメンタリー映画「水と風と生きものと」の劇場公開日から数えて丸1年になる9月11日(日)に、「国際オーガニック映画祭 in Kagoshima 2016」の本作上映後トークに招かれ鹿児島ガーデンズシネマに伺いました。本作の企画者として、映画について、生命誌についてお話することが、この1年を振り返り、改めてこれからを考えるよい機会となりました。

札幌から鹿児島まで、これまで全国各地で映画をご鑑賞頂き、会場ごとに行った、生命誌38億年を伝える出張展示や、紙工作やトランプで生きもの研究を楽しむグッズの紹介、生命誌を伝えるトークを通して、ご来場の皆様から様々な声を聞く機会となりました。ミニシアターや上映会の皆様にも感謝しています。

各地でその地域の方々と上映をご一緒していつも元気を頂きます。どのミニシアターも上映活動もみな個性的で魅力的、それぞれ背後にその土地、その町に固有の文化、歴史があり、その土台を踏まえて生活する人々が、自分たち独自の文化活動を求めて積極的に集う。実に、全国の映画上映や映画館の多様なありようは、その地の内発的な力が寄り合わさる場として成り立ち、その固有性があらわれているという共通性があるとの印象を強く受けました。

自分自身の日々の暮らしを振り返り、食べ物、買い物、子育て、身の周りの自然、もっと広く環境などを考えた時に、このままでよいのだろうか? という疑問を抱く人は少なくないと思います。そこに「人間も生きものであり、自然の一部である。」ここから私たちの日常を見つめ直そうという本作のメッセージが響いている感触を得ています。

私たち生命誌研究館は、「生きている(発生・進化・生態系)」を見つめ、「生きる(人生・歴史・社会)」を考えよう。と、いつも外に向かい呼びかけています。一方、映画館を「人生の学校」と呼ぶ人は少なくありません、私もその1人です。昔から映画館は「生きる」を考える場所なのです。映画多産のこの1年に、予想を越えて、たくさんの場で「水と風と生きものと」が上映されたことは、ここに相性の良さがあったのかもしれません。感謝いたします。

各地で固有な文化形成を実践する映画上映の現場巡りを経て、地元を振り返り、生命誌という活動は、高槻という土地で生まれた独自の文化である。という事実に改めて気づきました。ここから持続的な展開をめざさなくてはなりません。11月の「生命誌を考える映画鑑賞会」は、そこに向けての小さな一歩です。この時に上映する作品をここでご紹介したかったのですが、すでに長々と書いてしまいましたので、別に映画のFaceBookなどで発信することにします。

冒頭でご紹介した鹿児島ガーデンズシネマに先立つ8月26日〜28日の3日間は、北九州の映画上映会・東田シネマで本作を上映して頂きました。上映前のご挨拶で会場へ伺った際に取材を受けた内容を記事にして頂きましたのでご覧下さい(レイバーネット記事)。東田シネマも、上映会を運営する人々と映画を求めて集う人々の力が収斂する魅力的な場で、上映後に来場者の感想を丹念に集めて後日ホームページで発信して下さいます。ここまでやって下さる仕事ぶりには、ただただ頭が下がります。「水と風と生きものと」のご感想を、是非、お読み下さい。このような声を力に変えて、上映をまだまだ続けます!

[ 村田 英克 ]

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