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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【授業で遊ぶ生命誌】

2014年12月1日

村田英克

生命誌の表現は何をつくっても物語の構造をとります。季刊誌、展示、映像が物語であることはある意味当り前ですが、データベースやWEBアーカイブまで物語の形になってくるというのは、並大抵のことではありません。今回は、今つくっている映画の報告をと思っていたところ、思いがけず、嬉しいお話が聞こえて参りましたので標題も変えました。動詞「遊ぶ」で生命誌を考えた年の年刊号書籍『遊ぶ』の付録としてつくった「生命誌すごろく」の広がりです。最近、教育機関や公共機関への本の寄贈を積極的に行ったこともあり、いくつかの高校で理科の先生が授業の中ですごろくを活用して下さっているというのです。写真は岡山の高校で3年生の生徒さんが理科の授業で「生物の進化」の単元を学んでいる様子です。ご覧下さい。彼らは遊んでいるように見えますが学んでいます。

この授業で、きっと、生物の進化の原動力が、「遊び=柔軟さ」という生命の本質であるということを皆が実感してくれたのではないか、作り手としてはそう願っています。もう一枚の写真で窓の外で気持ち良さそうにのびをしている生徒さんがいます。彼は、きっと、すごろくのふりだしから6つ目「シアノバクテリア」のマスに止り、そこに書いてあった遊びの指示にしたがって、地球上で最初に光合成を始めたシアノバクテリアの気持ちで「●外へ出て全身でお日様を受け止める」を実行してくれているのです。生命誌すごろくは、もちろん38億年前の生命誕生から現代の多様な地球生態系に至る進化を辿る物語が主軸ですが、すごろくなので、遊びや、遊びのルールが織り込まれてできています。生きものがくぐり抜けた「スノーボールアース」など過酷な地球環境の変化は「紆余曲折」の文字通りすごろくの道のりでも曲がり角に配置。各マスの時代の生物や当時の地球環境をイメージするための指示には「●厚着をして塩をなめてみる」また企画時点では「●右隣りの人に噛み付いてみる(これは、校正の段階で表現が過激だったためもう少し柔らかい表現になおりました)」などは、いったい生命進化のどの時代の出来事を想像する指示だか、おわかりになりますでしょうか? 「生命誌すごろく」は2012年の製作です。つくり終わると別のものをつくり始めるので既にできあがった作品については、すっかり忘れてしまうことも多いのですが、今回の嬉しいご報告が、これをつくったときには、ほんとうにいろんなことを調べたし、考えたし、遊びとして構造化していく過程の楽しさを思い出させてくれました。さらにこうしてそれを活用して下さって広がっているということがほんとうに嬉しいです。ありがとうございます。「生命誌すごろく」ってどんな遊びだか、ご存知ない方のほうが多いと思いますので、ここにゲームに同封の解説書を挿入図とします。

実は、このすごろくは他の展開もありました。高槻の高校のやはり3年生の活用例です。最初は理科の先生がいらっしゃって、地元のつながりもあるし何か連携できないだろうかというご相談で、その時、答は出なかったのですが生命誌すごろくの話をしたのです。その後、数ヶ月たってから「生徒がつくったので見て下さい」と先生が持ってきたのは、理科の生物クラブの生徒さんが、自分たちで進化を調べてつくったオリジナルの進化のすごろくゲームです。ストーリーをつくり、イラストも自前で、さらに「エネルギーの通貨」ATPを蓄え、循環させるというルールまで発展していました。それでは、これで本当にどこまで楽しく遊べるか、実際に遊んでみようという話になり、私はちょうど映画のロケが入って参加できなかったのですが、後日、これをつくった生徒さん達が来館して表現スタッフと一緒に楽しく検証し、意見交換を行いました、以上が、すごろくの展開です。他にもこのような活用例ありましたら是非、お教え下さい。

さて、今回、ここでは語らなかった映画については、まず季刊生命誌83号のトークを是非お読み下さい。それから12/20(土)の館のレクチャーの枠を私が頂いたのでそこでもお話したいと思っています。

[ 村田 英克 ]

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