表現スタッフ日記

展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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採れる! 撮れる!

2013年6月3日

村田英克

前回の日記で「生命誌の映画」への思いを書きました。この映像作品は年度末のBRH20周年の催しで、館の活動をまとめる一つの表現として上映し、次年度に入ってから館でいつでも鑑賞できるような短編に仕上げることを第一の目標としています。この作品でメッセージをどう打ち出すか、今もあれこれ考え、議論を続けていますが、現実の出来事を対象とするドキュメンタリーの制作では、今しか撮れないことは撮っておかなくてはとり返しがつきません。それに、具体的に撮れてくると、そこからどんな作品が可能かもイメージできるようになります。そんなことで、今日は、最近の「撮れ高」についてご報告です。

5月上旬の三日間、撮影チームの方々と一緒に蘇さんの採集に同行取材しました。今回の採取地は本州最南端の和歌山。研究としてはイヌビワとその匂い採集が主目的でしたが、イヌビワがいればそこにはコバチもいるでしょう。案の定、フィールドから宿に持ち帰ったイヌビワ花のうのサンプルを割ってみると、沢山のコバチが!「花のうからコバチが出てくるシーンを撮れるかもしれない」と思ったら即行動です。最初の晩、この小さな被写体をどう撮れるかと試行錯誤、さらにコバチは日の出と共に花のうからワラワラ出てくることも確かめました。翌日、こちらの準備は万端です。宿に帰ってその日に採集したサンプルを朝日のあたる窓辺に並べ、目覚ましを5時にセット。お隣の撮影チームの部屋では、宿のちゃぶ台を借りてミクロのセットを組んで待ち受けます。翌朝5時、コバチが出てきました。ほんの数分間の出来事でしたが、イヌビワの花のうから羽化したコバチが次々と這い出してくる見事なシーンを撮れました。今回の和歌山採集はイヌビワが目的でしたが、二日目の採集地、紀伊大島の先端には見事なアコウの大木がありました。これに一番驚いたのは蘇さんのようで、どうやら蘇さんの把握していたアコウの分布北限が更新されたようです。三日間の採集取材は晴天に恵まれ、採集の様子や、いろいろな生きもの、自然をカメラに収めることができました。

続いて3つのラボの採集や飼育を5月中旬に撮影しました。小田ラボで扱っているオオヒメグモは、ラボで飼育しているので研究に採集の必要はないのですが、「身近な自然」を研究につなぐ意味もあって、撮影のために採集をお願いしました。「どこで採れますか?」と聞いたら「どこでも採れます」と言うので、絵になる近所の神社にお願いしての採集となりました。当日は小田さん、秋山さんが来てくれました。境内で軒下をよくよく見て歩くと確かにオオヒメグモが巣をはっています。小田さんらの話を聞きながら、クモとその採集の様子を撮影していくうちに、私たちもオス、メスの見分けもできるようになりました。

その翌日は、朝9時にBRHに集合。尾崎さんが普段行っている近隣でのアゲハチョウ採集の撮影です。その日の天気予報は、午後から雨。「こういう日はあまり飛ばないんですよ」と尾崎さん。めげずに「いつものコースでお願いします」。住宅地の外れで木が茂る場所や、田畑、川沿いを進みます。「採れる日は、この辺はいるんですよ。今日はいませんね」。歩き始めて1時間ほどたった頃でしょうか。「あっ、アゲハ!」捕虫網を持った尾崎さんを先頭に、カメラを回しながら総勢5名の撮影隊が一気に走り出します。その個体は逃しましたが、そこから機運が熟したのか、採れる、撮れる! ナミ、アオスジ、ジャコウ、キと、昼までに大きな収穫がありました。尾崎さんの網捌きもプロですが、それを捉えるカメラ捌きもプロ。圧巻でした。

高槻での二日間の撮影を終え、次は今回のロケ最終地の広島です。広島大学の両生類研究施設は、NBRPネッタイツメガエルを始めとする多様な両生類を実験動物として飼育・維持している他に類のない施設です。今、橋本さんが、この施設の協力の下で行っている実験の様子とあわせて、およそ20種ほどでしょうか、実に多様なカエルたち、イモリたちを撮影させていただきました。広島大学の柏木昭彦先生、住田正幸先生を始め、撮影にご協力下さった施設の皆さん、本当にありがとうございました。

今回、ご報告した撮影で、それぞれの研究、または生きものを知る入り口のところのイメージが少し見えてきたように思っています。全体像を考えながら、撮れるところはどんどん撮って行こうと言って、皆でがんばっています。

実は、今回の日記は、最近、撮影に同行したスナップ写真集にして、そのキャプションに、と思って書き始めたのですが、写真が入らないくらいの文字量となってしまいました。これはこれで成立するように思いましたので、ママとさせていただきました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございます。

6/15(土)のレクチャーは、当初、予定していた龍田研究員のレクチャーが中止になり、この日は、私が、表現を通して生きものを考えるセクターの仕事をお話することになりました。この時に、いくつかお話するものづくりの中で、映像制作のロケについても写真入りでご報告したいと思っています。ご関心のある方は、どうぞお越し下さい。

[ 表現を通して生きものを考えるセクター 村田英克 ]

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