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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【編集後記】

村田英克 本日、季刊生命誌68号をホームページに掲載しました。いつもは取材先で伺ったお話をこの日記のコーナーで書きたいなと思っても、うっかり書くと、あっ、次は誰々だなと、バレてしまうので我慢しているのですが、今日は発行日ということで、取材のご報告を少ししたいと思います。
 今回の中村桂子館長のトークのお相手は、諏訪元先生。「次の生命誌のエポックとして人類誕生を考えたい」という対談のお願いを心よく受けて下さいました。国際共同研究チームの成果として、2009年に“サイエンス”でも特集が組まれたラミダス猿人発見のお仕事を中心に、古人類学の最前線のお話をたっぷり伺うことができました。人類学の先人から綿々と受け継ぐ「人類の始まりを知りたい」という情熱や、フィールド調査で直感的に化石を見分ける深い経験談。綿密に解析した化石を根拠に論をたてて、440万年前の人類祖先の暮らしていた様子までもが浮かび上がってくる展開の醍醐味を、皆さんも、ぜひ対談を読みながら味わって下さい。
 諏訪先生の「博物館で、ラミダスの個体標本“アルディ”の全身化石骨の展示をご覧いただけますから」というご配慮により、対談は東大総合研究博物館で行うことになりました。対談の当日、私たちはとても贅沢なことに、諏訪先生の解説で、ラミダスの標本展示も含め常設展示「キュラトリアル・グラフィティ〜学術標本の表現」のガイドツアーを受けることができました。東京大学の人類学が立ち上がり、さまざまな出土品や化石骨と共に展開してゆく先人の業績が学問の歴史として非常にていねいに示されており、諏訪先生のお仕事を示す “アルディ”の全身化石骨も、その積み重ねの中にあるのだということが実感できました。
 展示には、考古学では骨から何をどのように読み取るのかを、来館者も考えることができるパズルのような工夫も施されており、研究を伝えたい、考えることを共有しようという静かで頑固な姿勢が一貫していて、とても居心地のよい空間でした。「一般の人からは、ちょっと専門的すぎるという声もあるのですが、僕は今の展示がとても気に入っています。」という諏訪先生の言葉がとても印象に残りました。諏訪先生ご自身が展示の企画もなさっていて、対談では、「物語を編む」という最終章で、展示を企画する立場でのお話も採録させていただきました。
 実は、ホームページをご覧いただいた通り、対談の本文の掲載はちょっと遅れています。諏訪先生は、本当にお忙しい中でこの対談のためにお時間を割いて下さいました。現在も海外調査などで忙しくされているお仕事の合間を縫って、編集原稿の最後のご校正をお願いしている最中です。3月下旬、なるべく早めに本文を掲載いたしますので、どうぞもうしばらくお待ちください。

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 [ 村田英克 ]

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