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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【食草園の日々】

今村朋子
 気がつけばもう12月ですね。この夏、季刊生命誌54号の特別企画として昆虫と植物の共進化ラボと始めた「生命誌の種」、みなさまのお手元の食草はいかがお過ごしでしょうか。Ω食草園に蒔いた種はすくすく育ち、秋口にはキアゲハがやってきて卵を産んでくれました。3匹いた幼虫も、今は園のどこかでサナギになって越冬中です。
 振り返る暇はないSICPの日々ですが、ちょっとだけ思い返すと、今年は食草園が「研究と日常をつなぐ場」としてずいぶん活躍してくれました。5月のリニューアルに始まり、日常的には館内案内、催し事では特別プログラムの一部として、多くの来館者の方にチョウと食草という身近な生きものたちのつながりを実感してもらうことができました。また、現在展示ホールで公開している新規出張展示のストーリーでも大切な役目を担っています。
 「生命誌の種」も食草園から生まれたアイディア。実は、突然に種を送って迷惑がられたらどうしよう・・・という迷いもありました。そんな不安を打ち消してくれたのが、カードを受け取った人の嬉しそうな様子です。中でも忘れられないのが、実験室見学ツアーの時、食草園でカードを渡した小さな子どもが、ほんとうに嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれたことです。研究者の話を聞き、チョウと食草の実物を見て実感した生きもののつながりを、その場で終わらせてしまうのではなく、持ち帰って、その人自身の日常のこととして考えてもらいたい。その目標が、ほんの少し達成できたのかな、と思いました。
 食草園は、いつでもガラス越しにご覧頂けるので、BRHに来館した際はぜひ覗いてみてください。来春には、「生命誌の種」を食べて育ったキアゲハの幼虫たちと成虫の姿で会えるかもしれません。最後にお詫びをひとつ。「生命誌の窓から」の写真が土のままでごめんなさい。できるだけ早く更新しますので、お楽しみに。


床板の隙間でサナギになったキアゲハの幼虫



 [ 今村朋子 ]

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