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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【桜の図鑑をみて気づいたこと】

坂東明日佳
 五月も半ばになり、もうすっかり緑の眩しい季節ですね。皆さんは今年、桜のお花見には出かけましたか?私の通う研究所(国立遺伝学研究所)では、構内に260種類(!)もの桜の樹が植えられています。染井吉野の起源を研究していた遺伝研の研究者の方が、桜の品種保存の目的で全国を巡って収集してきた桜たちです。毎年4月に行われる一般公開は、この色・形とりどりの桜の開花を一度に鑑賞できる機会として地元の方々にも評判のイベントです。今年も、大勢の人々で構内が賑わいました。
 この日、桜の公開に合わせて、私のお気に入りのアイテムが構内で販売されます。それは『遺伝研の桜』という小さな図鑑(桜の解説本)。その名の通り、遺伝研構内にある桜の配置情報や各桜の由来や特徴を解説した、遺伝研の桜のための図鑑です。これを手にもって構内を歩けば、全国津々浦々の桜巡り気分をより一層深く味わうことができるわけです。
 私も去年自分で購入した図鑑を再び使おうと、本棚から取り出してパラパラ開いてみました。すると「あ、データベースと違って凡例のページが見やすい・・・。」「収録されている桜の種類数が、計算しなくても一目で分かる・・・。」あれ、おかしい。去年は桜を楽しむためだけに使っていたのに、今年はなんだか図鑑の情報整理に眼がいきます。今年に入ってから“ユーザーマニュアル”を読みながらデータベースと向き合う日々だからでしょうか。毎日眼に触れるものが自分の関心や日常感覚に微妙な変化を与えているのなら、来年図鑑を見たときに桜と情報整理の両方を同じくらい楽しむことができるように、今年は生き物に向き合う時間をもっと作ろうかなと思いました。桜も散りましたので、図鑑は来年の春までまた本棚の中です。


 [ 坂東明日佳 ]

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