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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【私の水かき】

遠山真理
 いよいよアテネオリンピックですね。最近、スポーツにご無沙汰の私もさすがにそわそわしてきました。生物学を志す前はオリンピックを夢見た水泳っ子の私。当時は週に6日泳ぐといった今では考えられないストイックな生活をしていました。残念ながら、才能が花開くということはなく、敗れ去ってしまいましたが・・・今ではとてもいい思い出です(笑)。
 ところで、私、前々から気になって仕方のないことがあります。その昔、確かソウルオリンピックの後だと思いますが、背泳ぎの金メダリスト鈴木大地さんの手には水かきがあるらしいと聞きました。さっそく自分の手を確かめたところ、ありました!私の手にも水かきが。写真は現在の私の手です。特に中指と薬指の間の膜が人より大きいと思うのですが、いかがでしょうか。この水かきのおかげで、指の長さの印象が手のひらから見たときと、甲から見たときとで全く違います。不思議なことに、家族の中でも手に水かきがあるのは毎日泳いでいた私と弟だけ。小さい頃はなかったと思うのですが、そうはっきり覚えている訳でもありません。
 私たちヒトの手は、母親の胎内で、はじめ、拳のような形(水かきのある状態)をしています。発生の過程で5本の指の間の細胞がアポトーシス(プログラムされた細胞の死)によって死んでいくことで水かきの部分が減っていき、5本指の手ができあがります。水泳選手に水かきがある人が多いのは確かですが、生まれつき水かきがあるから水泳をやるのか、水泳をやるから水かきができるのか、どちらが本当なのでしょうか。私の印象としては後者なのですが、ヒトも潜在的に水かきをつくる能力をもっていると思うとなんだか感慨深いです。
 今回のオリンピックの競泳陣では北島康介さんをはじめ、有望そうな選手がたくさんいるので、しばらくの間はそわそわし続けることになりそうです。もちろん、泳ぎだけでなく水をかく手にも注目してしまいそうですが。




[遠山真理]

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