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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【バックナンバー 】

1998年6月15日

 先日、私がもといた某化学系研究室のOB会に出席してきました。そこで、いろいろな話をしたのですが、ちょっと面白い話がありました。現在大学の講師をしている先輩が、DNAと同じような物質を人工的に作れないだろうかと研究しているというのです。つまり、1次元的に情報を書き込んだポリマー(高分子物質)を作れないだろうかというわけです。
 一体どこまで進んでいるのですかと訪ねたところ、現段階では情報を書き込むだけでも難しいということでした。もちろん、DNAのように4種類の分子を使う必要はなく、2種類の分子だけ使って2進数の情報を書き込めればまずは大成功なのですが、それでもむちゃくちゃ難しい。
 高分子合成が中心の研究室だったので分かるのですが、1種類のモノマー(ポリマーの材料となる分子)を1次元的にきれいに配列するだけでも難しいのです。(途中に枝葉が付いて2次元的に広がってしまうことがよくある。)数を揃えて、例えば10個なら10個をきっちりとつなぐことはもっと難しい。ましてや、2種類の物質を必要な数ずつつないでいくなど言うに及ばずです。
 そんなわけで、かりに情報を書き込んだポリマーができたとしても、それを複製すること、その物質から情報を読み出すことなど、たとえ原理的には可能であったとしても本当にできるとはとうてい考えられないわけです。 そんなことが地球の歴史上で起こったのだからまさに奇跡としか言いようがない。DNA以外にどんな物質が生命を作り得たであろうか?DNAからできていない地球外生命など本当に存在するのだろうか?
 気が付いたら、そんな疑問もお酒の海に没していました。
[鳥居信夫]

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