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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

【バックナンバー 】

1998年6月1日

 こんにちわSICP 部門の工藤です。
 私は暇があったら本を読む、活字中毒。最近、本屋さんの科学書のコーナー以外の平積みの中に『遺伝子』という単語のついたものや、分子生物を題材にしたものがたくさんあります。一応、私の使命と勝手に思い、片っ端から読んでいます。漫画でもYASHA というNGF (神経成長因子)とクローンの話しがあります。BANANA FISHを書いた漫画家が書いているので、知っている方も多いのではないでしょうか。時代をキャッチする作家の皆さんのアンテナの素晴しさと勉強ぶりに感心させられます。
 いつもすごい時代になったなあと思うのですが、こういう話を読んで、なんとなく研究の世界を覗きみることが出来たら、それはそれで良いのではないかと思っています。しかし、小説ですから、それぞれに嘘があるわけです。そのだます方向を読むのが面白い。
 私達も研究をいろいろな形で表現することがお仕事です。しかし、いかに本来の研究の意味を踏みはずさずにイメージをふくらませて伝えるかは、本当に日々苦しんでいます。と言うか、私達はそこに重きを置いているから大変です。最近の私のヒットは『イエス の遺伝子』。クリスチャンのバックボーンをいかしていて、なんだか納得してしまいました。こういう方向に騙してくれると「うまい!」と思います。
 研究者がそういった類の小説を読んで、面白がる余裕を持てるかどうか?
 研究者にとって事実はとても大切なので、想像、直感を前面に押し出すことを嫌う場合が多いように思います。しかし、意外に「自分の社会での位置」を本から学べるのではないかと思います。内容を批判するだけではなく、本を楽しみ、かつ、研究者自身が研究のことではなく、自分のこと、自分と社会とのつながり、を考えるきっかけになるのではないでしょうか。研究が研究者だけのものではなく、皆が楽しむ時代がやってきそうな気配をたくさんの小説から感じます。私も、ますます本屋さんに吸いよせられてしまいそうです。
[工藤光子]

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