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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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イエユウレイグモがラボにやってきた

2017年8月1日

岩崎 佐和

6月上旬、私たちのラボにイエユウレイグモがやってきました。クモ目ユウレイグモ科に属するこのクモは、非常に細長い脚が特徴的で、普段は人家の薄暗い場所に生息しています。小田主任研究員が実家で発見し「あまりに太っているのでもうすぐ卵を産むのではないか」ということではるばるBRHまでやってきました。確かに華奢な脚とは不釣り合いなほど、腹部がパンパンに膨らんでいます (写真1)。

6月中旬のある日、私たちは期待通り母グモが産卵したことを確認しました(写真2)。イエユウレイグモは、一度に10〜40個の卵を産みます。卵は肉眼で見えないほど薄く糸で巻かれ、母グモの口にくわえられています。生まれたての卵は不安定なので、その日はそっとしておき、翌日回収して観察することにしました。


(左)写真1:腹部が膨らんだイエユウレイグモ/(右)写真2:産卵した母グモ

卵(胚)の観察は、普段オオヒメグモで行なっている時と同様にオイルに浸けて行います。私はイエユウレイグモの卵を見るのが初めてだったため、嬉々として顕微鏡を覗いたのですが、どうも普段見ている卵(胚)と違い、細胞が識別しづらく構造がよくわかりません。さらに翌日になって、オオヒメグモでいつも観察している「クムルスの移動」をイエユウレイグモでも観察できたことで、どうやら発生がうまく進行していそうだと判断できました。

クムルスが移動した後の胚は、胚体(胚帯)形成期・体節形成期に入ります。イエユウレイグモは尾部(尾葉)がフックのような構造を作りながら後方の体節を増やしていきます(※参考: 細胞の音楽 体節より)。

産卵から3週間ほど経った頃、子グモ達が孵化しました。まるで骸骨のような顔をしていますが、既に成体と同じような腹部の形状と細く長い脚を持っています(写真3)。個人的にはオオヒメグモの幼体の方が丸っこくて可愛いなと思いながらも、この小さいながらシュッとしたフォルムも可愛いらしいと思います。

現在ラボでは子グモを(共食いしないよう)数匹に分けて飼育しています。無事に育つかどうか楽しみです。また、母グモの方も再びお腹が膨らんできているので、次の産卵に期待しているところです。運が良ければ8月や9月のイベントでご紹介できるかもしれません。どうぞお楽しみに。


写真3:孵化した子グモ達

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 岩崎 佐和 ]

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