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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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育てる

2016年7月1日

吉澤 靖貴

私はカイコの研究にはじまり、現在はチョウの幼虫が食草の味をどのように見分けているのかを研究しています。なので、ムシが好きなのですか?とツアーなどのイベントでたまに聞かれるのですが、自分でもよくわかりません。でもひとつ言えるのは、「育てる」ことは好きです。高校生の時から現在に至るまで、さまざまな植物を種や苗から育てています。オクラ・ミニトマト・ピーマン・ネギ・ししとう・芽キャベツ…食卓に並ぶほとんどのものは育てました。育てたあとはやはり味覚を楽しみたいので、専ら野菜ばかりですが。毎日、すべての植物の葉一枚一枚を観察し、茶色くなっているものがいれば立ち止まり、その原因は何かと考えます。水不足や肥料不足、過剰の場合も植物はすぐに反応しますし、日照不足や害虫なども考えられます。さまざまな要因が考えられるので、図鑑で調べることも大事ですが、図鑑に載っていないこともたくさんあります。育てるということはトライアンドエラーの連続です。しかし、それを10年ほど繰り返すと、育てる過程でどこに注意を向けどのように対処したら良いのかが、なんとなくですがわかってきます。これは、座学だけでは身につかない、勘なのだと思います。「育てる」ということは、この勘が非常に大事だと思うようになりました。以前の研究で取り組んでいたカイコは、研究材料として非常に使い易い生きもので飼育も容易でした。しかし、ナミアゲハの幼虫はかなり曲者です。そして、1歳半になる私の子どももナミアゲハまではいきませんがどうやら曲者に近そうです。育てることは、頭を使い疲れますが、それだけ得るものも大きいです。これからも悩みつつ楽しみたいと思います。

[ チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 吉澤 靖貴 ]

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