ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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パラダイム・シフト

2015年2月16日

橋本主税

両生類の原腸形成機構についてのモデルが完成し、論文がこのたび受理されました。前世紀初頭以来、日本でも戦前から教科書に乗っていたモデルは誤りであったことを示す論文です。

詳細は、研究欄を見ていただくとして、何がどう違うのかについてですが、これまでのモデルの正反対が実は正しいということです。両生類の原腸形成機構の理解が変わると、じつは原索動物から羊膜類へと至る長い道のりが原腸形成過程に関しては説明できることになりそうなのです。脊索動物門(ホヤ・ナメクジウオから我々哺乳類までを含む)に属する生きものの原腸形成過程に統一的な説明は現状ではほとんどなく、したがって誰もが認める共通理解などということは難しいこととされてきました。しかし、両生類の新しいモデルから原索動物の発生がまったく同じように見えてきます。同様に、両生類とトリの発生が原則的に同じであることが分かります。そうすれば、哺乳類の発生過程にも新たな仮説が立つように感じますし、現時点においてこのモデルは脊索動物門の原腸形成過程を統一的に説明できるモデルになりうるだろうといえます。

さて、この論文を受理してもらうまでには長い道のりでした。このまったく新しい説を受け入れられる土壌がまだこの世界にはなかったのでしょう。でも、論文はもうすぐ公開されます。次は、このモデルの布教活動です。私たちは「絶対に間違えていない」と確固たる自信を持っております。しかし、科学の世界ですから、論理的な反論はたくさん出てきてほしいし、多くの人に検証作業を進めてほしいと感じます。その上でモデルの欠陥があれば訂正されるでしょうし、そうして、この新しいモデルに市民権が与えられるとなれば至上の喜びです。しかし、現行のモデルは一世紀近く信じられてきていますから、そう簡単に新しいモデルが広まるとは思えません。ただ、人々の目にさえ触れれば、批判的検証もなされるでしょうし、その過程で認知度は上がっていくことと信じます。以前、友人から励ますように言われた「パラダイムシフトはかならず起こるよ」を期待して布教活動に精を出さなければならないのでしょう。読者の皆様も、生命誌研究館にお越しの際にはぜひ橋本の解説を直接お聞きください。

(注)パラダイムシフトとは、「その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することを言う」とウィキペディアに説明があります。

[ カエルとイモリの形づくりを探るラボ 橋本主税 ]

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