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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【レンズはレンズ】

秋山-小田康子 もう9月ですね。今年の夏もろくに休みを取らないまま終わってしまいました。ほとんどの時間は論文のために費やしました。実は、金山さんの論文がまだ終わっていないのです。既に幾度か審査員や編集者とやり取りをしており、そろそろ(良い!)返事がいただけるはずなのですが。毎朝ラボに到着すると、メールが来ていないかどきどきです。(時差があるので、日本の昼間に連絡がくることはほとんどないのです。)
 さて、生物学でいう「再生」という言葉をご存知ですか? 動物によっては可能なことなのですが、四肢や尾を切り落としたり眼を取ったりした後に、もとと同じような構造を作り直すことを言います。有名なのはプラナリア。体を細かく刻んでも、その各断片からひとつひとつの体ができあがります。そして子供のころから馴染みがあるのはトカゲのしっぽかも知れませんね。しっぽを切ってもちゃんと生えてきます。それから、イモリ。生物の教科書にも載っています。ヒトは再生できませんが、と書こうとしましたが、もしかしたら究極の再生はiPS細胞からの分化かも知れません。
 今回、再生を話題にしようと思ったのは、さきがけ研究21でお世話になった江口吾朗先生のイモリの再生に関する論文が発表されたからです(Eguchi et al.,Nature Commun. 2:384)。論文によると、1994年に野外で採集したイモリで16年の間に18回(最初の14回は7年の間に2回ずつ)も眼のレンズの再生実験を行ったそうです。そして18回目であっても、ちゃんとレンズがあったところにレンズが再生されたのです。江口先生からはイモリをご自宅(?)で飼育しているというお話を伺ったことがあったのですが、長期間に渡る実験をなさっていたと知って驚きました。内容はもちろんですが、この論文の17年間だけでなく、そのはるか以前から生物に真摯に向き合って来られたのだろうと思うと、本当に感銘を受けます。一方、わたしはというと、いつもうだうだと悩んだり、迷ったり。好きな研究ができていることを喜んで、もっとがんばらないといけませんね。
 実は9月最初の週末に、江口先生をはじめ、「さきがけ」のメンバーだった方々との研究会が予定されていましたが、台風で延期になってしまいました。江口先生のお話が聞けるはずでしたので残念ですが、次の機会を楽しみにしています。


[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 秋山-小田康子]

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