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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【羊羹状の餌を食べているアゲハ幼虫はインパクトがあるようです】

尾崎克久 当研究室では、人工飼料を使ってアゲハチョウの幼虫を飼育しています。カイコ用の人工飼料に、アゲハチョウ食草の粉末を混ぜるだけという、仕組みとしてはとても簡単な方法です。でも、実は餌を作って幼虫を放したら勝手に食べてくれるというわけではなくて、きちんと累代飼育をするためには様々な工夫が必要でした。
 研究についてお話をする機会をいただいたとき、時間に余裕がある発表・講演では、幼虫が羊羹状の人工飼料を食べている様子を動画で見ていただいてます。これがとてもインパクトがあるようで、講演の本題よりも人工飼料に関する質問が多いことも珍しくありません。僕としては、受容体遺伝子の機能解析にもっと注目していただきたいと、少し寂しく感じることさえあります。
 先日、以前からお世話になっている海外の研究者の紹介で、チョウの翅型多型の研究で有名な方から人工飼料でアゲハチョウを飼う方法を教えてほしいという連絡をいただきました。僕のプロトコールを英訳して送るついでに、羊羹状の人工飼料をモリモリ食べている幼虫の動画も添付しました。この動画に大変驚かれたようで、我々の飼育技術にとても強い興味を持っていただくと同時に丁寧なお礼のメールをいただきました。
 「幼虫が羊羹状の餌を食べている」という動画は、まさに一目で内容が伝わる、プレゼンテーションとして優れた要素を持っているのだろうと思います。講演の後、本題よりも人工飼料に質問が集まることがあるというのは、本題のプレゼンテーションに問題があるのではないかという不安も感じます。
 研究成果をわかりやすく伝え、興味と理解を深めていただけるような表現力を身につけることが、とても大切なのだなと、投稿論文の原稿を修正しながら実感する一年となっています。私は運がいいことに、研究者・大学生・一般の方など様々な背景を持つ方々にお話をさせていただく機会が多く、そういったセンスや技術を磨くにはとても有利な環境に身を置かせていただいています。想定外の質問をしていただくと、専門分野の違う皆さんがどこに疑問を感じるのかという勉強にもなります。このチャンスをしっかり活かして、説得力のあるプレゼンテーションができるようになりたいものだと思います。

[チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 尾崎克久]

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