ラボ日記
ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【双子がいっぱい】
 
小田広樹
 最近のNATURE誌の記事で知ったのですが、インド北東部のUmri村では一卵性の双子が非常にたくさん産まれるそうです(もちろん、ひとの話です)。普通は250から300の出産に対して1組の割合で一卵性の双子が産まれるのに、そこでは10回の出産に対して1組の割合で産まれるということです。“一卵性” の双子なのでひとつの受精卵が卵割を始めてなんらかの経緯で胚がふたつに分かれるわけですが、偶然に起こるにしてはあまりにも高い確率です。環境要因で説明される可能性も排除はできませんが、ある研究者は双子を産まれやすくする遺伝子が存在するのではないかと考えていて、そのような “双子の村” からサンプルを集めてゲノムの解析をすることによって “双子” 遺伝子を見つけようとしているそうです。
 実は最近私たちの研究室でもこれに似たようなことがありました。もちろんひとの話ではなく、クモの話です。これまでにも私たちは実験室ツアーやレクチャーなどで、クモでは非常にまれに双子胚が生じるという話をしてきました。どれくらいまれかと言いますと、そのつい最近の出来事を除けば、私がこれまで見つけた双子胚をすべて合わせても5個にも満たない数でした。少なく見積もっても万の単位の数の卵を観察してきたはずなので、非常に低い確率であることがわかるかと思います。それなのに、ある親から産まれたひとつの卵嚢の中に(200個程度の卵を含む)、6個の双子胚が見つかりました(写真参照)。ひとつの卵嚢から複数の双子胚が見つかったのは初めての経験です。しかし残念なことに、同じ親がその後に産んだ卵嚢には双子胚はひとつも見つかりませんでした。双子が遺伝子によるものかどうかはわかりません。それでも、ひょっとしたら面白いかもしれないと私は思っています。というのも、その親グモはある二つの遺伝子の機能を同時に阻害するために処理していたもので、双子ができたこととそれらの遺伝子の機能との間に何か関係があるかもしれないからです。
 ひとの双子とクモの双子が同じ原因でできるとは思いませんが、どちらも発生学の非常に基本的な問題であることに違いはありません。どんな仕組みでクモの双子ができるのかを解明できたらと思っています。


ひとつの卵嚢から見つかった双子胚.腹側の正中線と各体節の一部が染色されている。頭端に向かう軸と尾端に向かう軸が交わって十字形またはY字形に見えている。


[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹]
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