ラボ日記
ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
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【ひさしぶりの会話】
 
吉田昭広
 9月の上旬に、「動物学会大会」に参加しました。
 「学会大会」では、決められた場で自分の研究を発表してコメントをいただいたり、他の研究者の発表を聞いたり、質問したり、といったことが重要であることは言うまでもありませんが、ふだん会う機会のない人たちと出会って気楽に話せることがプラスになることも少なくありません。私にとっては、今回ひさしぶりでKさんと会えて話せたのが、そんな「収穫」の一つでした。

 Kさんは大学にお勤めですが、何年か前からチョウのハネの「古典的」でユニークなテーマの研究を手がけられていて、私も同じチョウのハネを使っている関係上、たまに「問い合わせ」のメールをいただいたりしていました。しかし実際に会って話したのは、20年以上前に「泊まり込みの研究会」でごいっしょしたときと、その後、10年前くらいにあいさつを交わした程度だったと思います。
 学会大会にはめったに出ないという、あまり「標準的」でない研究者ですが、今回はめずらしく参加されていて、先方から声をかけてくれて、長い時間話すことができました。なかなかメールでは十分に伝わることのない、Kさんなりの研究に対する意欲と努力が実感でき、また、チョウのハネの研究が多面的に進んでいることも実感できて励みになりました。

 そんな「収穫」のあった一方、話しの中でふと漏らされたこんな一言も記憶に残っています。「(他の人の)発表を聞いても、『ああそうか…』と思うぐらいなんですよ」と。「(発表を聞いても)強い興味を覚えることがない」というニュアンスだったし、「好奇心の衰退」とも受け取れそうな言葉でしたが、私が感じたのは、彼が他の人の発表を聞いたときに、多かれ少なかれ「(時間と労力さえかければ)誰でもできる研究でないか」といった印象を覚えてしまうのでないか、ということでした。学会大会にあまり出てこない理由の一つのようにも思いました。「(学会大会に出て行くよりは)研究を進めるのにもっと時間を使いたい。」という考えかもしれません。
 私自身は正直なところKさんにもっと学会大会に出てきて、研究の「途中経過」であっても発表してほしいと思うのですが、その一方、私の「常識」には当てはまらない彼の個性と独自のスタイルをそのまま認めるべきでないかという気もします。自分の納得するスタイルを貫いて、短期的な成果はほとんど求めておられないようですが、いつかユニークな研究成果を発表してもらって、チョウのハネの「謎」の一端を明らかにしてもらえることを願うばかりです。



[チョウのハネの形づくりラボ 吉田昭広]
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