ラボ日記
ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【本物が見たい】
 
尾崎克久
 数年おきくらいで、定期的に恐竜ブームが起こります。僕が小学生の頃、マイアサウラが子育てをしていたという証拠が見つかったのを切っ掛けに、大恐竜ブームがあったと記憶しています。「小学○年生」とか「科学」といった子供向け雑誌でも、毎月のように恐竜に関する記事が掲載され、夢中で読んでいたせいか、洗脳状態に近い恐竜マニアになりました。子供向け雑誌だけでは飽き足らなくて、いろんな恐竜図鑑や大人向けの解説書のようなものまで読みました。大学生の頃には、恐竜の研究をするためにカナダへの留学を真剣に考えたことさえありましたが、諸般の事情でその希望はかないませんでした。
 学生の頃、大阪で開催された恐竜博を見るため、夜行バスを乗り継いで遥々やってきたことがあります。所蔵する博物館以外では初めて展示されるという、T. rex の完全標本として有名な「ブラック・ビューティ」の本物の化石を見たいがためでした。恐竜博のようなイベントや、博物館に展示されている恐竜化石の大部分はレプリカ(複製品)です。しかし、この博覧会では、ブラック・ビューティの本物の化石が頭部限定ながら展示されるというので、なんとしても見ておきたかったのです。会場でお会いした憧れの恐竜学者(カナダの大きな博物館に所属するとてつもなく有名な方です)に特別に案内をして頂きながら、レプリカとは違うのだと主張しているかのような、独特な迫力が漂う本物の化石を見ることができ、生涯忘れられない日になりました。

 恐竜マニアにとって、極一部でも本物の化石が見れるというのは、何物にも代え難い魅力があるのです。そこで、生命誌研究館をより魅力あるものにするためには、「本物」を来館者にご覧頂くのが良いのではないかと考えました。生命誌研究館の最大の特徴は、様々な研究で得られた知見を広く伝えるSICPセクターと、最先端であることを目指して研究に取り組んでいるラボセクターが共存していることにあります。実験室見学ツアーやサマースクールでは、「本物」の研究室を見て頂くことができますが、そこで見て頂く実験は見学や体験用に用意したもので、既にどういう結果が得られるかわかっているものです。その結果が新しい知見の発見につながっていくという、「本物」の実験ではありません。普段、実験室が非公開になっている理由の一つに、研究には人体に有害な薬品もいくつか使用されているため、見学者が知らずに触れてしまうのを防ぐことが挙げられます。しかし、危険が全くない作業もありますので、それを来館者にご覧頂ける場所でやってみようという取り組みを始めました。手始めとして、アゲハチョウを飼育するために使っている人工飼料の作成に関する作業を、4階の食草園前で行っています。これは、実際に研究材料のアゲハチョウを飼うために使用する、材料や餌を作成する「本物」の作業です。当ラボのメンバーが、その作業が必要になった時に不定期に行っておりますので、必ず見学して頂けるというものではありませんが、ご来館頂けましたら「本物」の作業が見れるかもしれません。

 この企画は、既にご覧頂いた皆様には、僕が期待していた以上のご好評を頂いているようですので、随時ご覧いただける作業を増やしていこうと計画しております。お近くにお住まいの方は、ぜひ当館に足を運んで頂きたいと思います。




[昆虫と植物の共進化ラボ 尾崎克久]
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