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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【卸売市場へ行ってきました】

佐々木剛
 確か前回のラボ日記では急に寒くなってきた、という書き始めだったのですが、今度はずいぶんと暖かく(暑く)なってきました。虫の採集にはよい季節ですが、今回は採集とは違う形で生物材料を求めに行った話です。
 先月、甲殻類のサンプルとして「シャコ」を入手するために、茨木市にある大阪府中央卸売市場に行ってきました。シャコは鮨のネタとしておなじみで、シャコエビ、エビジャコなどとも呼ばれたりしますが、エビやカニの仲間が含まれる十脚類(エビ下綱エビ目)とは違う、口脚類(シャコ下綱シャコ目)に分類されています。近所の魚屋さんではなくて卸売市場に行ったのは、実験の都合上茹でられたシャコではなく、生きているシャコが必要だったからです。
 他の昆虫や甲殻類は山や海辺などに採集しに行ったり、その虫の専門家に提供していただいたりしていたのですが、シャコは流通があるので事前に市場関係者の方々に電話でお尋ねしたところ(丁寧な応対をしてくださいました)、このところ毎日水揚げがあるとのことでしたので、始発の電車に乗って早朝の市場へ出かけてきたわけです。
 市場は仲卸業者から魚屋さんや寿司屋さんたちが仕入れる場ですので、一般人が出かけていって無事に生きたシャコを購入できるか不安でした。実際に行ってみると、大きなスペースにたくさんの仲卸業者がひしめき合っていて、活気にあふれていました。まず入り口に近いところにいらした方にお聞きしたところ、「活けシャコを扱ってるとしたら向こうのほうの○○水産へ行って聞いてみてごらん」と教えてくれました。その店を見つけて聞いたところそこにはなく、あちこち聞いて回った結果どうやらその日はシャコの水揚げは少なく、百近くある業者さんのうちのどこか一つを見つけ出さなければならないことがわかりました。もうすでに誰かに買われてしまっている可能性もあってかなり焦りましたが、あきらめずに一時間くらい探し回ってやっと見つけることができました。私にとっては幸いに、その日に獲れたシャコは比較的小さくあまり活きがよくなかったせいで売れずに残っていたようでした。
 自然の中で行う生物採集とは全く違いますが、今まで目にすることがなかった市場の中の様子や流通の出発点にある多くの魚介類を見ることができ、新しく楽しい体験となりました。もちろん、実験に使わなかった残りのシャコは皆で美味しくいただきましたよ。


シャコ


[DNAから共進化を探るラボ 佐々木 剛]

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