ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
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【今年のノーベル医学生理学賞】
 
小田広樹

 先日、ノーベル賞の発表があった。医学生理学賞は、多種類のにおいを感じる仕組みを解明したアメリカのリチャード・アクセル博士とリンダ・バック博士だった。
 この発表を聞いた時、私はノーベル賞が少し身近に感じれらた。受賞対象になった1991年の「Cell」という雑誌に掲載された論文が、大学院に入って間もない私が研究室の雑誌会(自分が読んだ論文の内容をみんなに紹介する会)で取り上げた論文だったからである。その当時の私には英語で書かれた論文の多くは理解するのが難しかったが、この論文なら発表できるかなという安易な考えからその論文を選んだような気がする。論文の内容を簡単に言えば、その当時すでに頻繁に使われていたPCRという方法でにおい物質の受容体と思われる遺伝子を多種類見つけたというものであった。論文に記述されている実験は特別難しいものではなく、その当時の私でも内容自体を理解することは容易にできた。しかし、科学の進展の中でその発見がどれだけの重要性を持っているかは理解できていなかった。
 彼らの研究の成功は「においを感じる仕組みがおもしろいはずだ」と研究者としての「鼻」を利かしてそのテーマにこだわったことにあるのではないかと私は思う。彼らはもともと免疫学者で、動物が多様な物質に反応するメカニズムを解明しようと早くから考えを巡らしていたのかも知れない。その論文をきっかけに、においの研究は急展開し、神経回路網の仕組みを理解するために多大な貢献をしているようだ。
 大学院時代の同僚がにおいの研究をしていることも、今回のノーベル賞が身近に感じられたもうひとつの理由である。



[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 研究員 小田広樹]

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