ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【殻に歴史あり・顔に歴史あり】
 
山崎一憲

 採集のために倒木をひっくり返しているとかたつむり(でんでんむし)がでてくることがあります。その中で、よく見ると傷だらけのかたつむりがいました(写真)。明らかに一度壊れた殻を修復しながら大きく成長した様子がうかがえます。このかたつむりの人生で、傷を負った時何が起きたのだろう、ひょっとしたら脚(!?)を滑らせて木から落ちたのかもしれませんし、敵に襲われ必死で殻の中へ身を隠し難を逃れた奇跡の生還かもしれません。あるいは仲間を助けようと敵に向かっていった勇者かもしれません。
 また、かたつむりと同じく軟体動物と呼ばれる分類群に属し食用とされる二枚貝のアサリにも傷ついたや個体やきれいな円形の窪みを持った個体を見ることがあります。この円形の窪みは肉食性のタマガイ類という別の貝に襲われた痕跡です。私が食べようとしたアサリ(写真)ではこの窪みが貫通していなかったところを見ると間一髪で難を逃れたのでしょう。でもどうやって?素早く逃げたのでしょうか、それともタマガイを追い払ってくれた正義の味方(?)が現れたのでしょうか、あるいはタマガイのほうが「こいつはまずそうだ」とでも思って途中でやめたのでしょうか。想像力がかき立てられます。
 現存する生物を比較(形態レベルであったり遺伝子レベルであったり)したり、化石から復元された過去の生物と現在の生物とを比較したり、また地球の歴史と生物の歴史をつなげ、太古の生物はどのような環境に生息し、どのような“生き様”で、どのように形態変化を遂げて今に引き継がれてきたのか、いろいろ想像してみるのはとても楽しいものです。しかも、研究が進み自分のデータや他の研究者のデータを総合して、その想像が次々と現実味を帯びてくると殊更です。私の場合、こんなことが、生物の歴史を知りたいと思う原動力になっているのかもしれません。
 話はずいぶん飛びますが、一年の計は元旦にあり、といいます。一年の計画を立てるのは難しいことですが、自分がチャレンジしたいことや各季節に自分がどこで何をやっているのか想像してみることは楽しいものです(逆にものすごく不安になることも…)。かたつむりやアサリの貝殻ではありませんが、顔にはその人の歴史や生き方が刻まれているという意味で、「男の顔は履歴書だ」という言葉がありますが、私は女性も同じだと思います。さて今年一年、自分の顔にどんな歴史を刻めるでしょうか。




[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 奨励研究員 山崎一憲]

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