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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生きものの名前】

山崎一憲

 最近、生物の名前にはまっています。奇妙に思われるかもしれませんが、生物の名前にはその生きものの形態学的特徴や生態学的特徴あるいは名付け親の思い(?)が含まれ、名前から生き物の姿を想像することは楽しいものなのです。
 生物には学術的に命名される「学名」が存在し、例えば実験動物として広く用いられているキイロショウジョウバエはDrosophila melanogaster、属名(Drosophila)と種小名(melanogaster)とをあわせて学名といいます。「キイロショウジョウバエ」というのは和名(あるいは一般名)となります。ちなみに、melanogasterはラテン語の「mela(黒い)」と「gaster腹)」の合成語です。同じ種でも、学名では「黒い腹」に由来し、和名では「全体が黄色い」ことに由来して名付けられたようです(色鮮やかなタナゴの種小名も「melanogaster」で、命名者には全体がきれいなことよりも腹の黒いことに目がいったのでしょうか)。このように生物の名前はその姿形を反映してつけられたものも多く、名前から実際の生物の姿を想像することは、わくわくするわけです。
 中でも、私が特にはまっているのは貝類の名前です。貝類は、その豊かな色彩と多様な形態から古来多くの人々を魅惑してきただけのことはあり、またおそらく命名者は想像力豊かな人が多かったのでしょう、ネーミングにセンスの良さを感じます。例えば、薄い緑を背景に白い斑点のある貝には「ハツユキタカラガイ」(ただの「雪」ではなく「初雪」とするセンスの良さにしびれませんか?)、自分の殻に他の貝殻をくっつけている(貝を盗んでいるような)姿を大盗賊熊坂長範にちなみ「クマサカガイ」、白くて大きな翼のように見える貝には「ペガサスノツバサ」や「テンシノツバサ」、ほかにも「ウグイスガイ」「ネコジタキクザルガイ」「クチベニマイマイ」「ノタウチマイマイ」……さらには「イジンノユメハマグリ」というのまであります。図鑑を開いていると、つい仕事をするのを忘れてしまいます…。
 みなさんも、図鑑を開いてみたくなりませんか?




[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 研究員 山崎一憲]

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