ちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

バックナンバー

生命誌をていねいに考える

2018年5月1日

生命誌についてお話をする機会があります。小学生から私と同世代の方まで対象はいろいろですが、これまでは、「生命誌」という知、「研究館」という実践を知っていただきたいという気持でお話をしてきました。「38億年という長い歴史と数千万種とも言われる多様な生きものたちとの関係を知り、私たち人間も生きものの一つであることに気づき、生きているってどういうことだろうと考えるとたくさんのことが見えてきます。」チョウ、クモ、ハチ、カエルなど小さな生きものを通して見える具体的な研究成果を伝えることによって、それぞれの方が何かを受け止めて下さるだろうと思ってきたのです。

最近その気持が急速に変ってきました。私たちが暮らす社会が、一人一人にとって生きる意味をもつ場であるには、社会を構成する人のすべてが真剣に「生きる」ということを考えなければいけないと強く思うようになったのです。権力とお金だけで動く社会をこれ以上許していたら、生きる意味などなくなるという危機感です。言葉がとても軽くなり、しかも品がなくなっているのが気になります。そこで、何かを伝えるために話すのではなく、お一人お一人が生き方を考えて下さいとお願いする気持になりました。とくに年配の方には次の世代によい社会を渡す責任があると思うのです。「生命誌」を生き方を考えるきっかけにして下さるとありがたいと思っています。私自身、今生命誌を改めてていねいに考えてみなければならないと思っているところです。そこで、こんな図を考えました。「私のいるところ、そしてこれから」という言葉に気持をこめて、たくさんのことを考えながら書いた図ですので、すぐにはわかりにくいかもしれません。でも毎日の暮らし方を考えたいという思いですのでそんなに難しいことを考えているわけではありません。次回からこの図にこめた気持を少しづつ書いてみたいと思います。

附. この原稿を書いている今日(4月24日)、我が家の台所に今年初めてのアリの群が登場しました。「いのちのひろがり」の最初のページの風景です。サービスとして小さく切ったハムを置いておいたら、30分ほどで消えました。

中村桂子の「ちょっと一言」最新号へ

close

Javascriptをオフにしている方はブラウザの「閉じる」ボタンでウインドウを閉じてください。