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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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ユングの同時性(シンクロニシティ)?

2017年4月3日

「和(なごむ、やわらぐ、あえる)」という言葉を切り口に考えようという今年の最初の対談のお相手をお願いした俳人の長谷川櫂さんが御著書「震災歌集 震災句集」を送って下さいました。あれから六年。あの時の衝撃は忘れられません。残念なことにその時思った、これで日本が変わるという予感は大きなはずれで、日に日に生きにくくなっていくのを感じます。

長谷川さんも御著書の「はじめに」に、「今回の未曾有(大臣が正確に読んで下さいますように)の天災と原発事故という人災は日本という国のあり方の変革を迫るだろう。その中でもっとも改められなければならないのは政治と経済のシステムである」と書いていらっしゃいます。その政治と経済に振り回されている研究者も変わらなければならないというのが私の思いです。「「真意ではなかった」などといふなかれ真意にもとづかぬ言葉などなし」です。そして今、「人々の嘆きみちみつるみちのくを心してゆけ桜前線」と祈ります(どちらも長谷川さんの歌です)。

ところで、本と同じ日、ポストに熊本の農業高校の元校長でいらっしゃる宮崎堅正先生のお手紙がありました。季刊誌で長谷川さんとの対談を楽しく読んだというお知らせの後に、初任校として赴任した八代農業高校の通学区に小川町がありましたと書かれています。長谷川さんが育たれた町とのことです。そして、長谷川さんが熊本地震後に書かれた昨年四月の熊本日々新聞の「くまモンがんばれ」というコラムを同封して下さいました。そう言えば、いただいた本に母校小川小学校の子どもに向けての句があったような気がすると思い、探したらありました。その一つ、「おはやう地球冬空果てしなく青き」。こういうのをユングの同時性と言うのでしょうか。本と手紙が同じ日に届いた偶然に驚き、でもこのような楽しい偶然はいいなと思った次第です。

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