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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【年の始めの御挨拶】

2014年1月6日

中村桂子

新年おめでとうございます。

昨年は年末に特定秘密保護法の制定、猪瀬都知事の辞任など詳細を書くと心がザワザワするので書きたくないような事が続きました。「終わりよければすべてよし」だとすれば「終わり悪ければすべて悪し」でしょうか。とにかくあまりよい年とは思えないまま終わってしまいました。

せっかく一年を過すのですからよい年にしたいですよね。今年は、気持よく暮らせますようにと願います。

実は、中沢新一さんに「中村さんの生命誌の話を聞いていると、日本人で女性だなあと思う」と言われました。生命誌は、普遍を金科玉条とする科学を基盤にしていますので、日本人とか女性とか言わないことにしてきましたが、日常の活動の中で、そういう面があるかなと自分でも思うことがあります。実は、鶴見和子さんとお話した時にもそれが話題になりました。「学問の中では日本人だからとか女性だからというのは考えないようにしているけれどでも私たちの考え方は日本人で女性だから生まれたのかもしれないわね。」と鶴見さんがおっしゃったのです。昨年の心がザワザワするでき事は、すべて金力や権力を思わせる男性の世界で強さを競おうとするものでした。これは、「人間は生きものであり、自然の一部である」ということを基本にしている生命誌には合いません。そこで、自然に近い生き方として、今年は女性と日本人を積極的に出してもよいかしらと思い始めています。日本人・女性の特徴は自然・いのちに近いことですから。原理主義でなく融通が効くことです。中空の世界にさまざまなものを取り入れるけれど、そうかと言って何でもよいのではありません。“いのちにとってどうでしょう”という判断が入っています。攻撃的な強さはないけれど、したたかさはあります。「権力」でなく「生きる力」を持とうとしているのです。権力志向が強くなっているように思える中だからこそ、今年もよろしくお願いいたします。

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