ちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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法王の厳しい批判

2013年12月16日

中学生の頃、イグナチオ教会が近く、クラスメートの信者に誘われて日曜日に通ったことがある程度でカトリックについては何も知らないのですが、今のフランシスコ法王には惹かれるところがあります。まず、フランシスコという名前が、アッシジの聖人を意識し、清貧を思って選ばれたものであり、バチカン宮殿を出て小さく質素な家で暮らしていらっしゃるのだそうです。普通の人が普通の生活の中で日々の苦しみを分かち合うことこそ聖なることという考えの実践とのことです。加賀乙彦さんがこれを紹介し、本当にすばらしい方とおっしゃっています。私が日頃すばらしい方と思っている加賀さんの言葉だけに心に沁みます。

ところで11月26日、フランシスコ法王が使徒的勧告で御自身の考えを出されたという報道がありました。報道と書きましたが、ヨーロッパでの報道がインターネットで紹介されているのであり、日本のマスコミでは見ないような気がします(全部チェックしたわけではありませんが)。教会は開かれたものでなければならず、あらゆる人と対話をすると同時に積極的に弱い人を助けようという呼びかけが基本です。開くことと弱者を強く意識していますが、これは驚くほど特別ではないのかなと思いました。けれどもその後に、強者の論理が勝る現在の経済システムは根本から正しくないとされているのです。インターネット上では、「『汝殺すなかれ』という戒律が人間生活の価値を守るための明確な制限を設定しているのとまさに同じように、われわれは今日、排除と不平等の経済に『汝向かうなかれ』と言わなければならない」という言葉が紹介されています。殺すなかれと同じくらいやってはいけないことという表現を、紹介者は「異例に露骨」と書いていますが、意図されるところはよくわかりますし、私も〈向かうなかれ〉と思います。

宗教者の発言ではあっても、人間の話であり、日本の新聞やテレビも積極的に取り上げて欲しいことだと思いました。

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