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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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マンダラについての中間報告

2013年5月1日

中村桂子

ホームページに目下作成中の「生命誌マンダラ」を載せました。基本構造はできましたので。見ていただけましたでしょうか。中心に置いたのは細胞、もちろんこの中にはゲノムが入っています。一つの個体の始まりの細胞です。生命誌絵巻の扇の要にあるのも細胞、これはすべての生命体の始まりの細胞です。実は細胞には二種類あります。原核細胞と真核細胞です。細胞という点では同じですが、まったく違うものとも言えます。同じで違う、違って同じという性質は生きもののもつ基本的特性であり、生命の基本といえる細胞ですでにこれがあるわけです。人間も生きものですから、当然この同じで違い、違って同じという基本の上にあります。違いだけに眼を向けると差別が生まれますが、同じで違うの違うは区別です。社会では差別が存在し・・・細胞の話から人間へと広がり、マンダラから離れているみたいですが、実は仏教での曼陀羅はまさに区別はあっても差別はない世界を描いているわけです。「生命誌マンダラ」も同じメッセージを持っており、しかも生命誌の世界は細胞から人間まで、つながったものとして考えられるところに意味があると思いながら描いています。

それはそれとして、原核細胞と真核細胞に戻ります。原核細胞の代表はバクテリア、一倍体と呼ばれ細胞の中にあるゲノムは一つです。それが複製して二つになると細胞は分裂して二つになり、増殖します。一方、真核細胞は二倍体、つまり細胞の中のゲノムは二つです。私たちの体をつくっているのは真核細胞で、ゲノムを二つもっています。一つは父親由来で、もう一つは母親由来。つまり生殖細胞(卵と精子)は一倍体であり、受精卵は二倍体、そこから生まれる体細胞も二倍体なのです。真核細胞は、このように一倍体と二倍体を行ったり来たりできるのが特徴です。生命誌絵巻をつくる時に相談にのっていただいた団まりなさんは、真核細胞のこの性質に注目し、真核細胞は原核細胞から階層が一つ上がった存在だと言っています。階層が上がるということは、新しい性質を持つことです。「階層」も生きものを考える時に大事なことであり、実は「生命誌マンダラ」の大切なテーマの一つはそれです。

今回は、最初の細胞という入り口で終わりましたが、追い追いマンダラ全体を語り、階層性というテーマについて語っていきたいと思います。感想お聞かせ下さい。

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