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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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「掌の宇宙」楽しみながら表現について考えました

2012.4.16

中村桂子館長
 劇団ひまわり「掌の宇宙」を観ました。劇団ひまわり俳優養成所で学ぶ若い方たちの発表公演です。演出の山下晃彦さんが、昨年の震災後の観客に何を届けたいか、役者にどんな言葉に向き合って欲しいかを考えた時、浮かんだのが「“手”をめぐる四百字」(文化出版局)だったのだそうです。この本は、「手」というテーマで50人が400字の原稿用紙に手書きした原稿を集めたもので、私もその一つを書いています。山下さんが選ばれた18篇の中に私のものも入れていただいたので、どんな風に若い人たちが受け止め表現してくれるかを楽しみに、代官山まで足を運びました。

阿久悠、小沢昭一、浅田次郎、小川洋子、中村吉右衛門、野村万之丞、藤原新也、山根基世などなど、さまざまな分野の方の400字。文字で読んではいましたが、舞台で語られると思いもよらずエロティックだったり、おかしかったり、悲しかったり。笑ったり、涙を流したりしながら表現の面白さを改めて感じました。実は舞台が進むうちに私の書いたもののダメさ加減がわかってきて落ち着かなくなったのですが・・・。

皆んな黒い衣装。朗読している二人以外の16人が、「しかし手は生命を絶つこともある・・・」のところで坐ったまま膝を打ちながらタッタッと足踏みをし、ちょうど兵士が歩いていくような音を立てることで、「つなぐ」に対する「絶つ」が思いの他際立ち、うまいなと思いました。演出の山下さんが「シンプルだけど、若い人たち皆んながいのちについてとても深く考えることになってよかったです」と言って下さったのでホッとしました。

我が館の表現も・・・。

帰りがけに、ランドセルを背負った子ども店長さんと一緒になりました。

 【中村桂子】


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