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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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相手の言うことをよく聞き、それから考えましょう

2012.2.1

中村桂子館長
 一月の〈ちょっと一言〉に、BRHの基本はそのままにコツコツと事を進めていくのが今年の姿勢ですと書きました。今年の姿勢などと申しましたが、振り返ってみますと、いつも年の始めにさてと考えては、やはりコツコツしかないという答を出しているなと思います。こうして20年たってしまったというのが本音です。
 ただ今年は、まわりが変わったと感じています。その気持を表わすのはとても難しいのですが、社会の支えが消えたような気がするのです。今まであった支えがとてもよかったというわけではありません。反対する相手もしっかりしていてくれなければ、うっかり反対もできないという意味での支えです。わかりやすかったのは、冷戦時代です。共産主義のソ連と自由主義のアメリカ。どちらも問題を抱えながらも、それぞれの主張は明快でした。そんな中でソ連が崩れ、ベルリンの壁が壊されるという流れになり、これで未来は明るいと思ったのがまさに生命誌を始めた頃でした。でもその後の社会は、生命誌から見て好ましいものにはなりませんでした。そして今では経済も政治も学問も生活もお手本がないという感じです。そして今年はそれがとてもはっきりと見えてきたように思います。難しいことになりました。まわりが変わったと書いたのはこのことです。
 でもこれってすばらしいことなのかもしれません。一人一人が自分で考えて行動すれば何かができる可能性が出てきたとも言えるのですから。もちろんそれは、何も考えずにいたらひどいことになるということでもありますけれど。確かに自分で考えて行動する人が少しづつふえているような気がします。もしかしたら、暮らしやすい社会になるかもしれませんね。ただ、この場合、皆が相手のいうことをよく聞かないとメチャクチャになるでしょう。そこでBRHでは、今年「対話」を大切にしていこうという約束をしました。まず人の言うことを聞くことから始めて、一人一人が考える人になれるとよいなと思っています。

 ところで今、表現セクターの仲間を募集しています。楽しい表現は今とても大事になっていますので、一緒に考える新しい仲間が欲しいのです。御自身でも周囲の方でもホームページの要項を見てお考え下さるとありがたく思います。

 【中村桂子】


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