中村桂子のちょっと一言
中村桂子のちょっと一言
館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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2011.12.15 

【今年も終わりですね】
 
中村桂子館長
今年も最後の「ちょっと一言」になりました。月並みですが時のたつのは早いものです。とくに今年は3月に大きな災害があり、もうあれから9ヶ月もたったのかと思います。一方で、進みの遅い復興に被災地の方の御苦労を思います。放射能汚染の問題もありますし。来年への持ち越し、更に続くものもあるでしょう。私たち皆の課題です。
 今年最初の“ちょっと一言”に、「日本には古くから自然との関わりの中でみごとな文化を生んできた歴史があるのです。」と書きました。たまたまその頃熱心に読んでいた「万葉集」や「宮澤賢治」の面白さに惹かれてのことでした。
 そして3月11日の東日本大震災です。古くから大事にしてきたものとは違う道を歩いたための問題点がたくさん出てきたようで、やはり「自然との関わり」の中での暮らしが大切だと改めて思いました。
 ところで、震災後なぜか手にしたのが「方丈記」でした。冒頭の「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたはかつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖とまたかくのごとし。」は受験勉強の時以来暗記しています。でもきちんと読んだことはありませんでした。読んでびっくり。貴族政治から武家政治へと移る社会の変動期に、大火、辻風(竜巻)、飢饉、大地震が次々と起こるのです。その中で清盛が勝手に福原遷都をしましたからますます混乱です。その中で、人々が疲れ果てている様子を、俗から少し離れた眼で見つめての記録なのです。自分で現場を歩いてもいます。日本文学史上初めての災害文学とのこと、今学ぶところがあります。鴨長明がこれを書いたのが1212年、来年でちょうど800年になることも知りました。原文は文庫本で20ページ、短くしかも読みやすいのでお勧めです(私はちくま学芸文庫の浅見和彦教授の解説のものを読みました)。
 もちろん、どの作品も読んだだけではダメで、これらの文化・歴史を今の世に生かさなければなりません。同じテーマが来年へと続くことになりました。しかもより大きな課題となって。研究館もそろそろ20年。小さな力ですが、独自の活動の一つに日本文化を入れていきたいと思います。是非この欄にも御意見をお寄せ下さって応援をお願いいたします。
 一年間お読み下さってありがとうございました。お寒いです。お気をつけてよいお年をお迎え下さい。

 【中村桂子】


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