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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【スローライフは柚子の大バカから】

2011.1.17 

中村桂子館長
 先日、スローライフ学会の瓦版に書いたこと、もうちょっと大勢の方にもお教えいただきたいなと思い、ここにもう一度書かせていただきます。
 まずスローライフ学会の紹介(宣伝)をしておきますね。学長は経済学者の神野直彦さん、東大名誉教授。スウェーデンを研究なさって、アメリカ型とは違う、分ち合いの経済を提唱していらっしゃいます。会長が増田寛也さん。元岩手県知事、総務大臣。地方から新しい政治、新しい暮らしを提案、実行なさってきた方です。そしてなぜか私が副会長。実はこの会の提唱者は筑紫哲也さんです。それに共感した仲間が応援団になったのですが、残念ながら筑紫さんはがんで亡くなられ仲間に托された形になりました。地に足をつけて、地域で生き生き暮らす本当の豊かさを求めましょうということで、学会と言っても専門家がいるわけではありません。NPOの一つの活動であり、地域で地道に活動していらっしゃる方たちが情報を交換したり、助け合ったり。これまで鳥取・淡路島・富山などいくつかの場で活動してきました。これからの日本の方向だと思いますが、まだ小さな活動。地域活動をしていらっしゃる方が参加して下さると元気が増すと思います。そこの瓦版に書いたのが次の文です。
〈ゆずの大バカ18年〉
 昨年末、庭の柚子が初めて実をつけました。6個。それを穫っていたら「桃栗3年柿8年、柚子の大バカ18年」とふと出てきたのです。桃・栗・柿はよく言いますが、柚子のことなど口にした記憶がないのにスルッと出てきてびっくり。大昔母から聞いたのでしょう。すると主人が「梅は酸い酸い13年だよ。柚子なんて聞いたことない」と言うのです。そこでインターネットという便利なものを開いてみると柚子も梅もあるじゃありませんか。梨の大バカ18年というのも出てきました。それぞれの家で必要に合わせて伝わったのでしょう。
 早速冬至の柚子湯に使いましたら、ひいき目抜きにしてもマーケットで買ったものに比べてよい香りで、気分よく暖まりました。実は今、熊本から送っていただいた晩白柚、お隣から落ちてきた夏みかん、柚子、そして以前から生っているキンカンを並べてお台所の飾りにしています。太陽と地球と月とテニスボール(比率は正確ではありませんが)。なかなか可愛いです。それにしても昔の人は生活の知恵を調子のよい詞にして上手に伝えてきましたね。梅干しの歌御存知ですか(長くなるのでまたいつか)。言葉通りにやれば梅干しができるというもので、姑と共に暮らした娘は諳んじています。学会コラムですので大げさに「知恵の伝承の大切さ」と結びましょう。
 このように、調子のよい言葉で日常の知恵を身につける方法、七・五調をもつ日本語の面白さを生かしています。生活の知恵としても、日本語のよさとしても伝えていきたいものだと思います。そんな言葉でお気に入りのものがあったら教えて下さい。

 【中村桂子】


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