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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【徹底した自然農法にびっくり】

2010.4.1 

中村桂子館長
 思いがけない方との出会いは絶えずあるものですが、先日、愛知県にある福津農園の松沢政満さんのお話を聞いてびっくりしました。里山の楚にある築後300年の家に暮らし、完全な有機循環農業を実践している方で、その分野ではリーダー格でいらっしゃるのですが、私は初めて。

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 25年前に脱サラ、Uターン帰農し、とにかく自然の摂理に従うという原則を貫いているとのことです。「不耕起直播」と言われると難しいのですが、耕しもしなければ、草取りもしない畑(写真で見ると常識的な眼には畑には見えません)にパラパラと種をまくと超のつくほど美味しい野菜がとれるというのですからすぐには信じられません。カボチャが一つのつるに5つ並んでいる写真・・・これだけ並んで、しかもおいしいと話した後、実はこのカボチャは翌日イノシシに皆んな食べられてしまったと笑わせます。これも自然の摂理ということでしょう。200種もの野菜を売り、年収は500万とおっしゃっていました。山羊のミルクは日に3リットル、ニワトリもいれば果樹もあり、加えてホタルもトンボもいるのですから豊かな暮らしです。県の農業総合試験所による土壌調査の結果、下は粘土質で、上から30cmくらいは、イトミミズがいっぱいのフカフカの土、なぜこうなのかまだわからないという報告でした。農園を緑で満たし(それには常識的農業でいう雑草も入っているわけです)、太陽エネルギーをフルに活用することを基本に生きものの力ですべてを動かすという考え方です。「条件不利と言われる山間地で家族農業を成立させた楽しく豊かな百姓暮らし」という言葉は、とても大事なメッセージだと思います。耕さない、草取らないという一見手抜きのような方法ができるのは、自然をよく見てよく知り、いつ何をするかがよくわかっているからでしょう。「みごとな気配り」があるからですよと仲間の一人が教えてくれました。
 こういう方にお会いすると気持が明るくなり、楽しくなります。文字では伝え切れないので、いただいた地図を添えます。眺めていると四季の様子が浮んできますし、鳥やカエルの声が聞こえてきます。本当の豊かさとはこれですよね。



 【中村桂子】


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