中村桂子のちょっと一言
中村桂子のちょっと一言
館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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2008.5.1 

【桜の力】
 
中村桂子館長
 今年は桜がとても上手に咲いてくれたように思いますが、皆さまの所はいかがでしたでしょう。まず東京。私の住む成城は、成城学園と共に生まれた街です。その時、学校関係の方を中心に、生け垣にしましょうという約束をしたり、桜並木を作ったりして下さったので、比較的きれいな街並みなのです。でも最近高い塀で囲む方が出てきてつまらなくなりました。中はどうもすてきなお庭らしいのに。もっと開放的な社会だといいなと思います。とくに春は縦横の通りが桜のトンネルになり、遠くへ出かけなくても花を楽しめます。三月末の週末には桜祭があり、近くのお店がお菓子を割り引きで売ったり、フリーマーケットが出たり、甘酒のサービスがあったりと楽しむのですが、お祭と花の満開とは必ずしも合致しません。花が開いたと思ったら雨が降ることもありますし。ここ数年はずれが続いていたのですが、今年は大当たり。桜祭の日がピタリと満開で、しかも風もなく暖かかったので例年になくたくさんの人手でした。なんだかとても得をしたような気がして、フリーマーケットで外国の方が売っていらしたきれいな絵本を買いました。
 このように大当たりなら気持がよいのは当然ですが、はずれの時に皆が機嫌が悪いかというとそうでもないのが面白いと思うのです。残念でしたとは言いますが、怒る人はいません。「寛容」。自然が相手なら皆そうなれるのです。一方、機械は思い通りでなければ許せません。私も、コンピュータなどちょっとでも言うことを聞かないとすぐイライラしてしまいます。今の社会を見ていると「寛容さ」が欠けてきているように見えるのは(塀を高くするのもその一つかもしれません)、日常生活が自然と離れ、機械化していることに関係しているのではないでしょうか。花に対して持てる寛容さが人間同士でも持てる社会でありたいな。きれいな桜を楽しみながら思いました。

<追記>
 生命誌研究館があるJTの構内も今年は桜がきれいでした。ここに建物ができた時に植えた苗木が15年たつとこんなに立派な樹になるのだと見上げながら、植物の力を感じました。今年初めて通り抜け(ベンチを置き、夜はライトアップ)を試み、7000人もの方が通って下さったとのこと、そのうち1200人ほどの方が研究館を訪れて下さいました。桜の力はすごい!です。


 【中村桂子】


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