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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【いつも本物で−かけ声と数字は結構】

2006.9.1 

中村桂子館長
 8月半ばに恒例の「サマースクール」を開きました。その時、受講者の一人(大学生)が言ってくれた「ここっていいですね。本物だから。」という言葉が今も心に残っています。本物。生命誌研究館はこれを大事にしています。たとえば、よく出されるのが、「生命誌研究館の活動は誰を対象にしているのですか。子どもですか。」という質問です。それへの答は、「生きものに関心のある人。生きているってふしぎだなと思っている人。なかでもそれに科学という切り口で入っていくと面白いと感じている人・・・。」ですから生命誌研究館へ行ってみようと思って下さる方がなるほどと感じて下さるように努めることを大切にしています。ところでサマースクールの参加者は、一番年下が中学一年生。高校生も大学生も大学院生も高校の先生も会社の経営者も主婦も。基本は一つ、サマースクールを体験したいという気持です。
 男性と女性のバランスもなかなかよいものでした。それぞれが関心を持った研究室に入って、いつも館のメンバーが行なっている研究の一部を体験します。二日間の最後はそれぞれのグループからの発表です。こうなると先生は先生、中学生は中学生、企業人は企業人の素顔がちょっとのぞきそれも面白い。共通点は、生きものに触れていかに楽しかったかを全身で語ってくれる点です。この時間は、それまで指導役だった館のメンバーが聞き役にまわり、担当したグループがどんな発表をしてくれるか、ちょっと心配しながらも、皆の話を楽しみます。宮田顧問の「学会だと眠くなることが多いんだけれど、この発表会は楽しくてあっという間に1時間がたちました」という講評は本音でしょう。
 「科学は文化であり、科学の表現が重要だ」ということを声高に言う方がふえてきました。これはBRHがずっと基本にしてきたことで、今更とも思いながら、もちろんこの方向に行くのは歓迎です。ただそのような発言やそれに基づく行動を見ていると、あるべきというような形のものが多いのが気になります。それはこうあるべきとしてできるものではなく、日常の中での本物としてしかできないことだと思うのです。季刊「生命誌」の50号で岡田節人前館長がおっしゃっていること、たとえば「アンケートはかなわん」は本物をやりたい人の気持です。アンケートでの%で動いている現在の世の中、決してよい方向とは思えません。50号のこの対談と勝木元也、西垣通さんとの話し合いは、大事なこと、大事な見方を出していると思いますので是非読んで下さい。今回のホームページの更新も本物をめざしました。いかがでしょうか。ご意見を聞かせて下さい。
 
 
 【中村桂子】


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